越境ECにおける決済サービス
世界のEC市場規模の規模拡大の背景として「インターネット人口の増加」、「オンラインショッピングのインフラ整備」、「物流インフラの整備」が挙げられます。
加えて多くのユーザーにとって利用しやすい「決済機能の多様化」がECの規模拡大の大きな原動力となっており、カートシステムにおける適切な決済手段の提供は越境ECを成功させるための一つの大きな要素となりそうです。
今回は越境ECを行う上で把握しておくべき各国の決済サービス事情や決済サービスについてお伝えします。
アメリカ、中国における越境ECにおける決済方法
越境ECの決済方法について考える場合、現地での支払い方法がどのように処理されているかを知ることは重要である。
〜中略〜
各国の消費者が普段使い慣れている決済手段を用意することで安心感のある越境EC決済をよりスムーズに行うことが可能となるであろう。
引用文は経済産業省 「電子商取引に関する市場調査」
各国によって普及している決済方法はかなり異なります。そこでアメリカ・中国の二国でのオンライン決済状況についてみていきましょう。
アメリカ
アメリカのECでの支払い方法はクレジットカード/デビットカードの利用者45%、PayPal 15%、小切手9%、銀行振替6%などとなっています。
アメリカのオンライン決済手段シェア
[出典:2014 THE PAYPERS]
クレジットカード大国とよばれるようにアメリカではECでもクレジットカードが最も使われています。またPayPalについては第三者決済サービスとして世界で最もよく使わている決済サービスの一つとして重要な位置づけにあるのでで詳しくふれてみます。
PayPal決済について
クレジットカード、デビットカードに次いで、世界で最も利用される決済手段のひとつで、世界のEコマース決済額の10%のシェアを占めておりアカウント数は2億以上。年間の決済取引額は7.07兆円にも達します。
PayPalの特徴
買い手と売り手の間にPayPalが入って代金決済する仕組みです。これにより買い手はショップにクレジットカード情報を知られることなく決済することが可能で、これがPayPal最大のメリットとなります。逆に言えば売り手側はカード情報を管理しなくてもよいので情報漏えいのリスク管理もしなくてよいということになります。
アカウントにカード情報を登録すればIDとパスワードのみでスピーディーに決済完了します。アカウント開設費や、年会費、利用手数料も全て無料。またペイパルで購入した商品に対して「商品が説明と著しく異なる」「商品が届かない」という問題があった場合に「買い手保護制度」を提供しています。
クレジットカードを扱えないような中小販売店であったり、顧客側がクレジットカードを持てないようなユーザーであってもお互いの資金移動を簡単にし、決済の問題を解決する機能はEC活動を活性化するうえでその存在意義は大きいとのことです。
【参考】ペイパルとは
第三者決済とは
第三者決済とは売り手と買い手が一定の実績と信用を持つ「第三者」を介して、物品や金銭のやり取りを済ませる取引方法のことです。買い手のメリットとしてオンライン取引における商品の破損や詐欺、カード情報の盗難など様々なリスクを回避し、安全性を保障するための決済方法となります。
中国
中国でのECではクレジットカード/デビットカードの利用者28.84%、PayPal 3.77%、小切手10.66%、銀行振替6.95%、アリペイ決済26.9%などとなっています。
中国のオンライン決済手段シェア
[出典:2014 THE PAYPERS]
中国におけるオンライン決済については、中国で最も普及している中国銀聯(UnionPay)カードによる決済と第三者決済として大きなシェアをもつアリペイ(支付宝)についてふれてみます。
銀聯カードについて
銀聯(ぎんれん)カードはデビットカードとクレジットカードに分類されますが、その多くは「デビットカード」所有者となっています。中国政府の国策による後押しによって普及した側面があり、2015年の第1四半期には「銀聯カード」の累計発行枚数は50億枚超、取扱金額は約1兆9000億ドルの実績となり、取扱金額が世界NO.1のシェアとなっています。
銀聯カードの特徴
上述の通り、銀聯カードはほとんどがデビットカードなのですが、デビットカードであることによるメリットが中国国内事情に適合しているようです。
日本と比べると中国では低所得者層の多くが、クレジットカードの審査に通らないといった事情があります。デビットカードは審査が不要なので低所得者でも預金残高内でカート利用が可能となるので中国におけるオンライン決済手段としても普及しているようです。
デビットカードは即時決済ができ、現金よりも決済が確実です。またクレジットカードと異なり売り手・買い手ともに手数料が不要となります。
日本国内においても決済代行事業会社であるソフトバンク・ペイメント・サービス株式会社が実店舗とネット向けに「銀聯カード」での総合的な決済サービスを提供することとなっており、中国向け越境ECにおいて今後重要な決済となるだろうと思われます。
【参考】45億枚も発行!中国銀聯(ぎんれん)カードが世界を覆い尽くす
【参考】銀聯決済/ソフトバンク・ペイメント・サービス株式会社
アリペイ(支付宝)について
アリペイはアリババグループが提供する中国で最も普及率の高いオンライン決済サービスです。中国での第三者決済サービスとしてもトップシェアをもち、中国向け越境ECにおいて必須となる決済手段となっています。
アリペイ(支付宝)の特徴
日本のECサイトにおいてアリペイ国際決済を利用すれば日本円のまま販売を行うことが可能です。アリペイ側で中国の通貨である人民元に換算するので、アリペイ利用者には、購入時の為替で換算された人民元での価格を確認して購入できます。日本のEC事業者は販売時点での日本円価格で売上が支払われるので為替変動のリスクがありません。
【参考】アリペイ国際決済/ソフトバンク・ペイメント・サービス株式会社
終わりに
越境ECで成功するためにも、その地域で広く普及し、利用しやすい決済手段を提供することは商材を用意すること以上に大切なことかもしれません。よって越境ECカートシステムの選択基準としてどのような決済手段が適切であるか知識やトレンドをしっかりと把握しましょう。
市川