これだけは明確に!
ECサイトリニューアル前に決めておくべき5項目
ECサイトのリニューアルには手間・コスト・時間がかかるものです。大半を外部委託する場合でも、業者選定やRFP(提案依頼書作成)などで検討事項が多く一苦労です。
そして、いざ見積依頼すると提案内容も見積も各社まちまち。。
また、ECサイトリニューアル検討の始めの段階で、「リニューアル後に必要となる機能」をご担当者がまとめられてていても、その他の重要事項が疎かになっている場合が多いです。
結果、見積依頼や検討自体もうまく進まない、ようやく着手した作業もうまく進まない、その上リニューアルオープン後も思うように効果(売上利益)が出ない、といったことが多く見受けられます。
そこで今回はECサイトのリニューアルの着手前に、必ず検討しておくべき5つの事項をまとめます。
“必要な機能性”以外で、スムーズな見積実施やリニューアル作業はもちろん、リニューアル後のECサイト構成並びに費用対効果、ユーザ満足度の向上、オープン後の売上改善などの効果を高めるために重要な事項です。
後々「しまった!!」とならないように、是非ECサイトリニューアルの着手前にご参考ください。
ECサイトリニューアルの着手前に決めておくべき5つの事項
※これらは案ベースでも十分です。詳細は以下ご参考ください。
[1] ECサイトリニューアルの目的と目標
文字通り、リニューアルの目的と目標を決定することです。そもそも何のために(=目的)今回ECサイトをリニューアルし、どのような状態(=目標)にしたいのかを必ず定義して明文化しておきます。
なぜこれらが必要かというと、ECサイトのリニューアルには複数の人が携わる場合が多く、この目的や目標があいまい(明文化し、共有されていない)ならば、それぞれが勝手な意思決定の中で作業を行い、結果、複数で進める創作物の目指すべき目標がそれぞれバラバラ、場合によっては全く異なる方向へ進んでしまいかねないからです。
また、これらを定義することで本当にリニューアルが必要なのかも明らかになり、その費用対効果も合理的な思考ができます。
必ず
- 「今回のECサイトリニューアルは何のために行うのか(目的)」
- 「リニューアル後にどのような状態にしたいのか(目標)」
をできる限り具体的に定義し、明文化します。
例えば、以下のような感じです。
【例】何のために行うのか?
「現在PCサイトに対しスマホサイトのCVRが1/2以下と低く、スマホユーザーに十分満足なECサイト提供ができていない、伸長しているスマホユーザに対してもっと満足度高いECサイトを提供しなければいけないから」
【例】リニューアル後にどのような状態にしたいのか
「ユニークユーザー数を落とさず、スマホとタブレットのCVRをPCと同等にし、リニューアル1年以内に売上を現状の1.5倍向上させる」
これらを明文化することで、その作業に携わる人たちの大きな指針・意思決定の基盤ができ、目的をしっかりとらえて目標に沿ったECサイトリニューアルを進めることができます。
[2] リニューアル後のECサイトマップ
リニューアル後のECサイトマップは、最初に見積を依頼する際や、どの部分を内製するかか外部委託するかの作業分担の決める際にも必要となります。
サイトマップが具体的に決まっていれば、具体的な作業内容も明確になるため、かなり正確な見積を取得したり、作業分担(予算検討やリニューアル作業については後述)の検討を正確に行うことが可能です。
また、検討初期段階では完璧なサイトマップが完成している必要はなく、見積実施のための案レベルのものでも十分です。
特に、費用見積や作業工程に大きく影響するのが、特集ページやランディングページ等のコンテンツボリュームが多い静的ページです。
これらのページが何ページあり、そのボリュームはどれほどかが速い段階で明確になっていると見積や作業の精度が高まります。
また、現在のECサイトと基本的にサイトマップは同じ場合でも、視覚的に導線を再設計する際やTOPページのコンテンツ見直し(ワイヤーフレーム検討)を行う際にも必要となりますので、できれば早期にサイトマップ(案)をまとめておくことが重要です。
[3] リニューアル後のECサイト対応デバイス
リニューアル後のECサイトの対応デバイスとその対応方法は早期に決定しておく必要があります。どのデバイス(PC、スマホ、タブレットなど)に対応したいか、によりその対応方法は大きく異なり、また各対応方法でメリット・デメリットや初期構築コスト・運営コストも大きく異なります。
対応デバイスは主にスマホ、タブレット、PCがありますが、その対応デバイスを決定する方法は、「現在のECサイトへの訪問者のデバイスの割合を確認すること」と「今後のデバイス割合を予測すること」です。
「現在のECサイトへの訪問者のデバイスの割合を確認すること」の具体的方法はGoogleアナリティクス等で直近1年程度の月次デバイス別訪問者数(UU)の構成比推移を確認することで簡単に把握できます。またこのトレンドから「今後のデバイス割合を予測すること」もおおよそ可能です。
また「今後のデバイス割合を予測すること」でもう一つ重要なことは、データだけではなく“自分たちで考え予測すること”です。自社商品のターゲットユーザを本当に理解しているのは“EC運営している人たち”ですので、自分たちで1,2年後の自社ECサイトへ訪問するユーザのデバイス比率をイメージしてみることが大切です。
最もターゲットユーザを理解しているのはデータではなく当事者ですから場合によってはこれがUUなどのデータ以上に重要かもしれません。
これらの情報をもとに、対応デバイスを決定します。この対応デバイスを決定すれば、おのずとGoogleのページでも紹介されている以下の3つの対応方法が決定します。
- レスポンシブウェブデザイン
- 動的な配信(PCコンテンツをスマホに自動表示)
- モバイル専用サイト(専用ページ)
※これらの3つの対応方法についての具体的な内容やメリット・デメリットなどの詳細は別途(改めてECサイトのモバイル・マルチスクリーン対応手法をまとめてみた)記事をご参照ください。
これら対応方法のそれぞれにメリット・デメリットがあるため熟慮は必要ですが、これらの記事やGoogleのページの情報をまとめると以下のようなことが言えます。
例えば、スマホ/PC、もしくはスマホ/タブレット/PC、もしくはスマホ/タブレットのように複数のデバイス対応が必要な場合など
⇒[1]レスポンシブウェブデザイン が有効な対応方法
(理由)更新が容易であり、あらゆるデバイスでの満足度も高く、またあらゆるデバイスで同じコンテンツを閲覧しデバイスまたぐ利用でUXが高いため。※Googleがスマホ対応方法で最も推奨する対応方法。
例えば、PC向けのみの提供の場合やPCサイトを中心に運用し、スマホ向けには“一応”提供するレベルでよい場合など
⇒[2]動的な配信 が有効な対応方法
(理由)特定デバイスを中心に構築運用する場合は、構築コスト・運用コストが安価で運用も容易。
→[3]モバイル専用サイト が有効な対応方法
(理由)大きくPCとモバイルで異なるコンテンツを提供し、異なるユーザ体験をさせたいECサイトを除けば、上記[1]や[2]の対応方法の方が有効となるが、何らかの理由(例えば「会社都合によりどうしても現在のPC向けECサイト運用システムを使い続けなければいけない」など)で[1]や[2]の対応方法ができない場合はこの対応方法となる。
上記のように対応デバイスと対応方法により大きくリニューアル後のECサイト構成が異なってきます。
特に複数デバイス対応がマストの場合、Googleも推奨する[1]レスポンシブウェブデザインでの実施がベターです。しかし[1]レスポンシブウェブデザイン自体が新しい概念であるために、これまでの多くのECサイトのスマホ対応方法については、商品ページ等は[2]動的な配信で自動的にスマホ対応し、TOPページや特集ページなどの主要ページはスマホ用ページを作るというような、[2]動的な配信と[3]モバイル専用サイトをミックスした複雑な対応方法を取ってきました。
そして未だに多くのEC関連業者はこれらの構成を適正に理解していない場合が多いので、複数デバイス対応の場合は[1]レスポンシブウェブデザインでのリニューアルを前提として、とくにTOPページからショッピングカートやマイページまで含めしっかりとした“フル”レスポンシブウェブデザインでの見積やショッピングカート・CMSなどのプラットフォーム選定、業者選定を注意して行う必要があります。
[4] ECサイトリニューアルのスケジュールと予算
ECサイトリニューアルの具体的な作業スケジュールは委託会社が詳細計画しますので、予め決定しておくべきスケジュールは特に“いつECサイトをリニューアルオープンしたいのか”というオープン目標日です。
ASPを利用する場合のリニューアルにかかるおおよその作業期間はベーシックなECサイト(以下のサイトマップ参考)の場合で約1.5-2か月、静的ページが多い場合や社内での検討フローに時間を要する場合は2-4か月程度です。
当然機能カスタマイズなどを行う場合はその工期が別途必要になりますが、おおよそ上記のように1.5か月くらいの期間があればECサイトのリニューアル自体は可能です。
ですから決めたオープン日から2か月程度前、余裕を見る場合は3~4か月前には着手(業者決定し作業の着手)できるよう検討が必要です。
一方予算については、見積の取り方でまちまちになってしまいます。
しかしながら、以下の項目内容がしっかりと決まっている場合はそれほど見積に大差が生じないはずです。
なぜなら実際にどこの制作会社に作業依頼しても実施する作業内容に大きく変わりはないからです。
あとは作業単価がどれほどかということで見積費用が決まってきます。
そこで以下にベーシックなECサイトをフルデザイン(テンプレートを使うのではなく、TOPページ、カテゴリーページ、商品ページ等のデザインを作成してから制作)でリニューアルした場合の工程とその見積費用目安を記載します。
ECサイトをフルデザインでリニューアルの作業工程別の見積費用目安―――――
※ASP利用
※前提条件:3デバイス対応フルレスポンシブECサイト
作業項目 | 費用感 |
---|---|
aコンセプトワーク | 20~30万円 |
bワイヤーフレーム制作 | 10~20万円 |
cデザイン制作 (TOPページ、カテゴリーページ雛形、商品ページ雛形を制作し納品) |
20~40万円 |
dデザイン・コーディング | 20~40万円 |
e下層ページ制作 (特商法/会社概要/プライバシーポリシー /ご利用ガイド/問合せ等主要ページ5ページ程度) |
15~30万円 |
f商品登録 | 10~20万円 |
g諸設定(カテゴリ登録、配送設定など) | 5~10万円 |
h SEO関連、アナリティクス設定など | 10~30万円 |
iテスト | 10~20万円 |
jディレクション | 10~20万円 |
【合計】130万円 ~ 260万円程度
上記以外の費用としては、まずプラットフォーム(カートやASPなど)をリプレースする場合はそのプラットフォームの初期費用やランニング費用、決済導入の費用が必要です。
(※ページの構成やデザインがある程度決まっているテンプレートを使用してリニューアル実施した場合はおよそ40-80万円程度)
また、上記以外の費用としては、プラットフォーム(カートやASPなど)をリプレースする場合はそのプラットフォームの初期費用やランニング費用、決済導入の費用、また足りない機能を追加する場合や自社基幹システム連携などの独自カスタマイズが必要な場合は、カスタマイズできるASPを選定することが条件とはなりますが、その費用も加味する必要があります。
[5] ECサイトリニューアル作業の担当分担と体制
リニューアル作業の担当分担と体制をおおよそ決めておくことは、社内リソース確保のためや、またリニューアルできるだけ早期に正確な見積を得るためにも重要となります。
リニューアル作業について、当然ながらその全行程を内製した場合は外部委託する費用は必要はありません。外部委託の見積を依頼する場合、“要はどの作業を外部委託するのか”が決まっていなければ見積自体が進みません。
具体的な作業は前項の「ECサイトをフルデザインでリニューアルの作業工程別の見積費用目安」のa~jの作業工程の通りですが、これらを自社でするのか、外部で実施するのかを決めておく必要があります。そして、その外部実施の作業について、各社に見積依頼すると精度の高い予算見積を取得することが可能です。
社内の体制としては、可能であれば、リニューアル専任の担当者を指名してリニューアルの体制を取ることを望まれます。ただでさえ忙しい通常業務にリニューアルを実施することになるので、体制ができていないと作業も進まなくなります。
社内の体制としては、リニューアル専任の担当者を指名し、リニューアルの体制を取ることが望まれます。ただでさえ忙しい通常業務に加えてリニューアルを実施するとになるので、これらの体制ができていないと作業も進まなくなります。しかしながら実際には、専任は難しい場合が多いです。兼任の場合は、その場合は業務負荷を勘案し、ある程度作業を外部委託して進められるように体制から作業分担も検討しておく必要があります。
▼ まとめ
理想を言えば、これらの事項をECサイトのリニューアルについての起案があった直後、つまり見積実施や業者との接触前の段階で決めておくのが好ましいです。
しかしながら、余力も少ないため早期にこれらの項目を決定できない上、リニューアルの経験がなくそもそもこれらの内容も今一つ分からない場合は、見積や外部業者と打ち合わせを重ねることで理解できてくることも多くあるため、ドンドン外部業者を打ち合わせしてみてください。そして打合せを重ねながら、これらの事項を整理して行ってもよいでしょう。
そして業者決定や作業の着手前には必ずこれらの事項を決定・明文化してください。でなければ、作業も非効率で何よりも、リニューアル後の効果も得られることができなくなります。是非ともこれらの5つの事項を決めた上で業者決定や作業着手をされることをお勧めします。そうすればきっとよいECサイトのリニューアルになることでしょう。
岩波