独自性の高いECサイト構築と言えば、ひと昔前はEC-CUBE等のオープンソースやパッケージソフト(スクラッチ開発も含む)をベースに開発する方法が主流でした。これは、EC運営に必要な機能を漏れなく揃える為にはシステムを1から構築するほか方法が無かった為です。しかし最近では、EC市場の発展に後押しされるように、クラウド上でECサイトを構築するASP型のカートシステムが成長し、大手ECサイトにおいてもASPを使う潮流になってきています。
この記事では、潮流にあるASPを選定する場合に念頭におくポイントをご紹介するとともに
ASP(クラウド型)、オープンソース、パッケージソフト(スクラッチ開発も含む)それぞれの特性や違い比較します。以下に記載の比較表をご参考に、メリット・デメリットをご確認頂き、これからのEC構築システム選定のお役に立てたら幸いです。
ASP(クラウド型)の概要
ASPとは、Application Service Providerの略で、インターネット上でアプリケーションを利用するサービスです。EC事業者はクラウド上にある共用のプラットフォームをベースにECを運営できます。必要な機能がすでに用意されており、今後の機能拡充や独自にシステムを開発する必要がありません。導入後もサーバーやアプリケーションの管理、機能バージョンアップ、セキュリティアップデートをシステム提供会社の責任のもとで行いますので、EC事業者はシステムに関する特別な知識や技術を有する人材が不要で、月額と利用量に応じた従量課金を支払うのみでECサイトシステムを運用できます。機能カスタマイズは容易ではありませんが、標準機能内での運用を前提とすることで安価に利用できます。
オープンソース・パッケージソフト(スクラッチ開発)の概要
オープンソース・パッケージソフトを利用したECサイト構築とは、専用のサーバーやクラウドサーバに”ECサイト毎に”システムをインストールして運用する方法で、必要な機能の設計・構築が柔軟で独自性の高いECサイトの構築に適しています。システムの自由度が高い反面、サーバーやアプリケーションなどの安全性(セキュリティ)、安定性や機能性等は自己責任で運用する必要があり、システムに関する方針や特別な知識や技術を有する人を継続的に確保する必要があります。
利用料金はシステム初期構築費用及びサーバー代金、及び保守やセキュリティ維持、時流に応じた機能追加開発にかかる費用が発生し、ASPに比べ長期的にはシステム運用や人件費等で高額で、かつ専門性が高い人材の確保も必要となります。
ASP(クラウド)/オープンソース/パッケージソフト(スクラッチ開発)の違いを比較
※ASP(クラウド)はカスタマイズ可能なクラウドECサイト構築システムとして代表的な「aishipR」で比較
ASP(クラウド) ※aishipRの場合 |
オープンソース | パッケージソフト (スクラッチ開発) |
|
---|---|---|---|
方式 | クラウド型 | 専用サーバにインストール型 | 専用サーバにインストール型 |
料金体制 | ・月額制(サポート・運用保守含む) ・サービス利用期間のみ支払 ・解約は容易 |
・ベンダーは初期の構築・機能開発で利益の大半を回収 ・返品不可 ・納品後の継続的なサービス改修・改善のインセンティブは小さい |
・ベンダーは初期の構築・機能開発で利益の大半を回収 ・返品不可。買切り(現金、リースなど) ・納品後の継続的なサービス改修・改善のインセンティブは小さい |
サーバー提供管理 | ・aishipRが提供管理 ・無償で随時アップデートし高負荷時への対応も実施 ・AWSを採用 |
・EC事業者が用意し管理 ・サーバインストール、構築作業必要 |
・EC事業者が用意し管理 ・サーバインストール、構築作業必要 |
システム運用保守 | aishipRが実施 | EC事業者もしくは協力会社の技術担当が実施 | EC事業者もしくはパッケージ提供会社が実施 |
提供体制 | システム開発・運用保守・サポートをワンストップで提供 | ・ソフト提供元・開発・保守会社は異なる ・責任範囲が不明確になる可能性あり |
システム開発・運用保守・サポートをワンストップで提供 |
システムバージョンアップ | aishipRが実施(月2回) | ・EC事業者もしくは協力会社で実施 ・エンジニアだけでなくシステムに関するディレクターも必要 |
・EC事業者もしくはパッケージ提供会社で実施 ・エンジニアだけでなくシステムに関するディレクターも必要 |
機能の最新性維持 | ・月2回のバージョンアップで常に業界標準の機能を提供 ・多くのユーザーが望む機能を積極的に追加 |
・機能追加方針EC事業者で実施必要あり ・機能追加作業については実費を負担し協力会社へ依頼が必要 ・最新性の維持が難しく陳腐化により数年に一度システム入替えが必要 |
・機能追加方針EC事業者で実施必要あり ・機能追加作業については実費を負担しパッケージ提供会社へ依頼が必要 ・最新性の維持が難しく陳腐化により数年に一度システム入替えが必要 |
セキュリティ | aishipRが常に最新の状態にアップデート実施 | EC事業者が自己責任のもとは協力会社へ依頼し実施 | EC事業者もしくはパッケージ提供会社が実施 |
方式 | クラウド型 | 専用サーバにインストール型 | 専用サーバにインストール型 |
機能追加カスタマイズ | aishipRの場合可能 ※ASPにより不可 |
可能 | 可能 |
運用サポート | ・aishipR専任スタッフが実施 ・電話サポート付(平日10:00〜17:00) ・オンラインサポート、対面サポート有 |
協力会社へ外注必要 | パッケージ提供会社が提供 |
ASP(クラウド)/オープンソース/パッケージソフト(スクラッチ開発)のメリット・デメリット
比較表の内容をまとめますと、以下のようなメリット・デメリットが見えてくるかと思います。
メリット
・システム開発・運用保守・サポートは提供事業者が行うので実際の運用に集中できる
・EC事業者はシステムに関する特別な知識や技術を有する人材が不要
デメリット
・基本的にカスタマイズができない。標準機能内での運用を前提
メリット
・必要な機能の設計・構築が柔軟で独自性の高いECサイトの構築に適している
デメリット
・保守メンテナンス、専門性が高い人材の確保などコストがかかる
しかし、ASPでデメリットと言われてきた部分も最近では以下のように対応できるASPがでてきており、ASPという選択に追い風をもたらしています。
・型にとらわれない自由なデザインのサイト構築が可能
・外部システムとも柔軟な連携が可能
・独自性の高い機能追加カスタマイズに対応が可能
・大規模アクセスに対応
さらに、オープンソース/パッケージソフトの場合、システムの納品がゴールとなるケースが多く、納品と同時に役務が終了する場合もあり、EC事業者の本来の売上利益向上という目的とその支援ベンダーの収益目的と一致しない場合が往々にしてある点もデメリットになり得ます。一方ASPの場合は、EC運営がスタートするサイトオープン後も、継続的な支援をする必要が出てきます。なぜならばそのビジネスモデルが、継続的なパートナーシップができて初めてASP事業者も収益があがるからです。
ASPは、より多くのEC事業者に永く利用頂けるよう、プロダクトを全体設計した機能追加開発を無償で行っております。たとえaishipRのようにカスタマイズに対応したASPをベースに独自機能を追加開発をするとしても、完全にスクラッチ開発のように、ある1社だけの要求を満たすような機能開発ではなく、プロダクトに要求を寄せていくという観点があるとさらに良いパートナーシップになります。
まとめ
以上にてASP(クラウド)、オープンソース、パッケージソフト(スクラッチ開発)を比較して参りましたが、いかがでしたでしょうか。単純に流行に乗るのではなくシステムを見極めることが大切です。ASPを選定するならその特性をしっかりと捉え、ASPのビジネス性質を最大限活用しながら共に繁栄を目指していくことが、EC事業者にもASP提供会社にも双方にメリットが生まれ、今後のさらなる発展へと繋がっていくことでしょう。