ECサイトをレスポンシブ化させるASP「aishipR」を導入いただいているユーザー様の生の声を元に、運用効率・移行コスト・課題についてご紹介したいと思います。
運用効率については、弊社でレスポンシブECサイトを導入いただいたユーザー様3社のヒアリングを総合すると、「新規ページ追加更新の作業手間(工数)が大幅に削減された」という結果が得られました。
数値で見ると約60%程度(「リネアストリア、構築運用技術レスポンシブECサイトを導入(MMD研究所)」です。
中でも最も運用効率が高まったのは「デバイス毎の画像作成やページ作成がいらない」という点です。例えば、特集ページを構築する運用工程でその改善効果を検証してみますと、これまでは7工程が必要でした。
- PC用画像作成
- PC用ページ作成
- スマホ用画像作成
- スマホ用ページ作成
- 携帯用画像作成
- 携帯用ページ作成
- リダイレクト設定
しかし、レスポンシブ化後は2工程で済みます。
- レスポンシブ用画像作成
- レスポンシブ用ページ作成
次に運用効率が高まったのは「これまでは各デバイスのページ更新は素人では難しかったが、レスポンシブサイトはワンソースのみの更新なので、素人でもマルチデバイスコンテンツの更新が可能」というユーザー様の言葉にあるように、マルチデバイスECサイトの下層ページの細部にまで管理ができるようになったことです。
これまでは時間がなく、末端ページのコンテンツまで管理が行き届かなかった。また細部ページのリダイレクト対応もできていない状態だった ーaishipRユーザー談
レスポンシブECサイトではデバイス毎の管理が必要なくなり、サイトの細部まで管理が可能になりました。その結果、低減した運用工数分をこれまで実施できなかった作業に振り分けることができます。
また楽天などの他店舗運営との親和性については、「今はレスポンシブECサイトの本店をメインに運用している。商品ページなどはレスポンシブECサイトのPC部分(CSSのPC部分)を切り取り、楽天のPCにアップ、スマホも同様にコピペで済むので、楽天との併用運用は非常に楽。ただし、重複ページの問題があるため、一部を画像化して楽天にアップしている」とのこと。楽天との併用運用もこれまで同様問題はないようです。
現状のECサイトをレスポンシブ化する際にかかるコストや必要な知識リソースはどのようなものでしょうか?
まず、現状のECサイトを運用しながら、コンテンツやデザインをあまり変更せずにレスポンシブ化する工程を考えてみましょう(「aishipR」を利用した場合です)。
- 現状のPCコンテンツをベースにタブレット、スマホを加味した主要レイアウトを設定
- 下層ページコンテンツコピーとレスポンシブ化の調整
- 顧客/商品データのコピー
- オープン
という比較的容易な手順で実施可能です。工程の中でも重要なのは1で、トップページなどの主要ページでレスポンシブECサイトとしての動きを決める部分です。初めての方が少し苦労する点です。
その移行工数は、主要ページ(例えばトップページや商品ページの雛形などのサイトのテンプレートになる部分)には3デバイス分のコスト、その他のページには移行に大きな手間はかかりません。ただし、ショッピングカートやCMSはレスポンシブECサイトのプラットフォームにリプレイスする必要があります。
外部委託する場合も含め必要な知識やリソースは、レスポンシブ化の知識(CSS3、レガシーWebブラウザ対応、レスポンシブの動作など)が必要になります。
レスポンシブ化が初めての場合はせめて主要ページ部分(トップページ、商品ページ雛形、カテゴリページ雛形など)だけでも知識を持った方に実施してもらう方がよいと思います。
ただ、コツを覚えれば、HTML/CSSの知識を持つ方であれば容易に実施できると思います。最も入手しにくいのは、モバイルECサイトの構築/運用知識でしょう。レスポンシブECサイトのワイヤーフレームを設計したり、運用する段階でどうしても必要になってきます。
ページ一元構成のレスポンシブECサイトは、インターネット利用端末のモバイル化/マルチデバイス化という時代背景から合理的Webサイト運営を実現するために出現したECサイトイト運用の方法です。Googleが推奨している点もありますが、今回の検証をまとめてみますと、
- ECサイトの運用効率60%向上
- CVR(転換率)103%改善
- 自然検索アクセス数146%改善
- 注文数129%改善
となります。現時点で考えられる最高の次世代ECサイト運用構成だと考えてもいいのではないでしょうか。
ECサイトのレスポンシブ化は今始まったばかりです。ですからコンテンツをどこまで共通化するのか、どのような商品レイアウトがユーザーを満足させるのかなど、課題はあります。CSS3やJSの使い方にも改善の余地があります。
しかし、いち早くECサイトのレスポンシブ化に着手し、2015年に向けてその運用ノウハウを身につけたECサイトは、マルチデバイス向けの高度なユーザエクスペリエンスを提供することにおいて、一歩先んじることができるでしょう。
結果的に、モバイル化/マルチデバイス化時代のECサイト利用者からの厚い信頼を勝ち取ることになるかもしれません。
岩波