ECサイトASPを比較してみる
ECサイトASPを比較検討する上で必要となる、ECサイトASPにはどのようなサービスがあるのでしょうか。
そのサービスのポジションとマッピング、トレンドを加味した上で、それぞれのサービスの特徴とその比較表などをご案内し、ECサイトASPを比較検討する場合の参考にしていただければと思います。
ASPの比較検討は初期段階から必要に
ECサイトASPの比較検討及び決定は、ECサイト構築の初期段階で必要になります。
なぜなら図1のように、比較検討し選定したECサイトASP上で、構築・運営・集客するためです。基本的にサイトの要件定義やコンセプト設計がなされた次の段階でECサイトASPが決定される必要があります。
また、その選定したECサイトASPは、ECサイトを構築運営するために連携する多くのサービスのプラットフォームにもなる(図2参照)ため、非常に重要となります。
このようにECサイトASPはその選定工程が構築ステップの中でも非常に速い段階で必要です。そして多くの仕様がそのASPにより決定付けられてしまいます。
要は「ASPの標準機能でできないものはできない」ということになるため、決定を急ぐ必要があるのにも関わらず、比較検討も非常に重要というジレンマがあります。
日々変化するECサイト市場の環境を考えると、そのECの機能性については多様性が求められるため、機能性の比較検討は至難を要します。なので機能性については、絶対に必要な機能性が分かっているもののみの比較検討として、その他の機能性は必要な時にカスタマイズするという選択肢もあります。
例えば、これまでのECサイトASPのように「ASPだからカスタマイズできない」というものだけでは、構築初期では検討しなかったことが、運用してから必要になることも多々あります。
なのでASP比較検討の中で「有償でもECサイトASPカスタマイズが可能」というものを選定候補にあげるのも重要です。
インストール型との比較
ECサイトASPの比較検討する際に、ともに比較検討されるサービスに「インストール型」というものがあります(図3参照)。
サーバもECサイトを運用するためのシステム(ショッピングカートやCMS、受注管理などの機能)パッケージをクラウドで提供するASP型とは異なり、そのシステムパッケージを特定のサーバにインストールして使うもので、ECCUBEなどのオープンソースや完全スクラッチで開発する自社開発もこれらのインストール型に含まれます。
クラウド型カートASPとインストール型との違いは、簡単に言うとクラウド型ASPはシステムパッケージのバージョンアップを無償で提供側が行い、そしてトレンドに合わせてどんどんそのシステムは勝手に進化し機能拡充していく半面、インストール型はそのシステムの進化はインストールした時点で止まってしまうというところです。
ですのでインストール型では機能拡充などの進化は自らの費用や指示で実施しなくてはなりません。一方ASPでは標準機能外でカスタマイズできないものが多いため、独自機能性を追求する場合はインストール型を使う傾向が強いです。
しかし、インストール型は年間数百万円といった保守費用や数百万円~数千万円の機能追加費用が必要になるので、よほど売上利益が出ているECサイトもしくは十分なコスト予算が無いと保守運用に行き詰まるケースが多くなってきています。最近では月商1億円程度までのECサイトの大半はASPを選定される傾向にあります。
国内主要サービスのポジションマッピング
そこで、これらのクラウド型カートASPとインストール型も含めた国内主要サービスのポジションとそのマッピングを以下図4に示します。
大きく分類を「パッケージ型」「クラウド型ASP」「オープンソース」「低価格ASP」として、ECサイトの年商規模に対してそれぞれのグループでの主要サービスをマッピングしてあります。(分かりやすくするために各サービスによりその対応範囲は少々ことなるかもしれませんがその点はご了承ください)
ECサイトASPの選定
ECサイトASPの選定では、これらのサービスの中から比較検討し、選定を行う必要があります。
その中で重要なポイントの1つが「どのようなコンセプトに重きを置くか」という点です。細かな機能性は有償カスタマイズでの機能追加を前提とすれば、必要なときに必要な機能を考えればよいですが、大きなコンセプトはそもそもそのECサイトASPがどのようなECサイト向けに作られているかという点ですので、選定の大きな要素となります。
なぜならそのコンセプトはプラットフォーム根幹の構造をなす場合があるので、自社のコンセプトとある程度合致したコンセプトを前提とするものを選定したほうが、結果的に有償カスタマイズの必要性が少なくなる等のメリットが多くあるためです。
最近のトレンドのコンセプト例には例えば以下のようなものがあります。
【越境EC】海外に販路を見出す通販サイト。海外で実店舗や代理店を開拓する直接投資に比べて、コストを抑えて販路拡大ができる。
【O2O】インターネットの活動を実店舗に活かす手法。スマートフォンやSNSの普及により、リアルとWebを行き来する消費者に対して相互に影響を及ぼすマーケティング。
【マルチスクリーン化】PCだけでなくスマートフォンやタブレット、ウェアラブル端末などECサイトにアクセスするデバイスが多様化している。また、Googleも検索結果にデバイスに合わせて表示を最適化しているサイトを評価する傾向にある。
次に、この中でも国内ECのほとんどが加味する必要があるマルチスクリーンというトレンドとECサイトASPの比較のポイントについて見てみます。
マルチスクリーン対応ECサイトASPの比較ポイント
ECサイトのマルチスクリーン対応の必要性については、以下図5のようなモバイル端末の普及と利用の拡大によるモバイル化トレンドと、以下図6のような、ネット利用端末のマルチスクリーン化という大きなトレンドによります。
Googleのマルチスクリーンへの対応
このような市場の中でGoogleもマルチスクリーンの動向が加速してきています。
検索エンジンのシェアについてYahoo!もGoogleの検索エンジンを利用しているので、Googleの動向に対応していなければ、集客を落としてしまうことはもちろん、どれだけ多く流入を得るかが売上に影響するため、自社ECサイトにおいては自然検索からの集客は生命線なので、このGoogleの動向は重要視しなくてはなりません。
そして、2015年4月21日のモバイルフレンドリーアップデートは大きな衝撃となりました。このアップデートはスマホ対応サイトをモバイルでの検索結果で優遇する仕様に変更するとしたもので、要はGoogleの検索エンジンへのインデックスを加味した場合、マルチスクリーン対応(モバイル対応)のECサイトが絶対条件となったのです。
当然ながら各ASPもマルチスクリーン対応(モバイル対応)ができるようになっているのですが、このマルチスクリーン対応(モバイル対応)の方法について、コンセプトの違いが大きくあります。
図7のように大きく分けて「ページ分離構成」か「一元ページ構成(1URL、1HTMLのレスポンシブECサイト)」という2種類の対応方法が挙げられます。このどちらのコンセプトのASPを選定するかという点が特にマルチスクリーン対応のECサイトには重要です。
なぜなら、そのそれぞれの構造とメリット等は、上記図8に示すようにレスポンシブECサイトの方がメリットは高く、また以下図9のように、GoogleもレスポンシブECサイトを推奨しているためです。
また以下図10のようにマルチスクリーン化傾向の中でも注目されるEC利用者の引継ぎ利用に対しても有効であるためです。
図は少し古いため60%ですが、最近では70%を超えるユーザが消費完結するまでに複数デバイスで同一サイトやページを利用する傾向にあります。デバイス毎にページコンテンツの差異があると引継ぎ利用時のユーザ体験が悪く離脱が発生する可能性が高まるため、引き継ぎ利用を加味して、どのようなデバイスでも同じコンテンツを提供し均質なユーザ体験を提供しなければいけません。
何を優先して選定するのか?
このようなことからマルチスクリーン対応を前提としたECサイトの場合、そのASPの比較選定では「レスポンシブ」をコンセプトとするASPかどうかという点も検討材料には非常に重要な要素となります。
上記は「マルチスクリーン」に焦点を当てた一例ですが、以下図11~14には、上記ポジションマップに示すサービスの機能カスタマイズ性、越境EC対応、O2O対応、マルチスクリーン、価格帯(ランニング費用)で比較した表ですので、検討の材料にしていただければと思います。
<画像はそれぞれクリックで別ウィンドウで開きます>