11月5日、Googleの「ウェブマスター向け公式ブログ」にてモバイルファーストインデックスが発表されました。
今回は、モバイルファーストインデックスへの対策(そもそもモバイルファーストインデックスとは何か、モバイルファーストへの大きな流れ、重要なモバイル中心思考など)やモバイルファーストインデックスに対して、一般的なECサイトが置かれている3つの状態から、具体的にどのような対応を講じればよいかをECサイトの構築運営という視点で解説します。
モバイルファーストインデックスへの対策とは
モバイルファーストインデックスとは
まず、モバイルファーストインデックスとは、Googleの検索結果の表示アルゴリズム(法則)の変更のことを指します。これまで検索結果の順位を決定する対象として、Googleでは「PCサイト」に表示されるコンテンツで順位を決定してきました。
この「PCサイト」に表示されるコンテンツで順位を決定してきたものを「スマホサイト」で表示されるコンテンツを基本として順位を決定するものです。いわば評価対象となるサイトが逆転するようになります。
導入時期についてはGoogleはまだ明確にアナウンスをしていませんが、今後数ヶ月以内で導入が予定されています。(テスト的には既に導入中みたいです)
モバイルファーストへの大きな流れ
Googleはこれまでにも、世の中のインターネット接続がモバイル中心へと流れていく過程において、以下のような検索エンジンのアルゴリズムアップデートや提言を行ってきました。主なものを挙げてみます。
・2012年6月12日「レスポンシブはGoogle がお勧めするモバイル対応方法とする」
・2013年6月11日「スマートフォン向け検索でのランキングの変更」
・2013年8月16日「スマートフォンサイトの読み込み速度を改善する施策」
・2015年4月21日「モバイルフレンドリーアップデート」
そしてここにきて、検索順位の評価対象をモバイルへと逆転させる、モバイルファーストインデックス。背景には日々増加するモバイルからのアクセス数や検索数やがあります。
既にインターネットに接続しているデバイスではモバイル(スマートフォン)がPCを大きく引き離し、2016年9月発表の大手調査会社ニールセンの調査でも、モバイル5,697万人に対して、PC4,283万人と1,500万人近くモバイルとPCでの差が開いています。今後さらにこの差は開いて行くのは確実です。
参考:スマホヘビーユーザーの実態~ニールセン、上半期のまとめレポート 「Digital Trends 2016上半期」を公開~
さらにネットショッピングで利用するデバイスにおいても、MMD研究所の2016年9月の調査では既に「ネットショッピングをする時に使うデバイス」において、約66%がスマートフォンを利用していると回答しています。
参考:ネットショッピングをする時に最も使うデバイスとしては「スマートフォン」が増加傾向、2015年より5.5ポイント増
MMD研究所のデータでは、2015年よりも5.5ポイント増えていることにも言及されています。ネット人口のスマートフォンへのシフトとともに、スマートフォンでショッピングをする方も今後ますます増加し、モバイルファーストへの流れは今後も加速度を増して進んでいくことは明白です。
モバイル中心思考
これらモバイルファーストインデックス含むモバイルファーストへ移行するために、ECサイトが取るべき対策としては、「ECサイト構築運用をモバイル中心思考」で進めることに尽きます。
モバイル中心で思考するとは、例えば制作や更新の現場では、作業者はPCを利用することが前提となりますが、ユーザーはスマホが中心であることを意識し、新規で構築した商品ページや特集ページの確認は「まずはPC」ではなく「まずはスマホの“実機”」で行うことを徹底すること等を言います。これまでのPC中心とした思考とは真逆の思考を持つ必要があります。
また自社ECサイトのアクセス比率を確認した時に、PCからのアクセスよりも、スマートフォンからのアクセスが多いのにも関わらず、PCユーザーを中心としたコンセプト設計やワイヤーフレーム構築、デザイン作成をすることは本末転倒です。
それでは具体的にECサイトがモバイルファーストインデックスにどのように対応していけばよいのか、次章で具体的な対応方法を解説します。
モバイルファーストインデックスへの具体的な対応方法は
前章でご紹介したモバイル中心思考で行っても、マルチスクリーンへの対応(スマホだけではなく、PC、タブレットなどの複数のデバイスへ対応すること)は必要になってきます。
そのマルチスクリーンへの対応方法は大きく2つ、「分離構成」か「レスポンシブ」か、です。
分離構成とは
PCサイト、スマホサイトを別々に構築することです。PCサイト用HTML/URL、スマホサイト用HTML/URLを用意しそれぞれ別々に運用していく構成です。画像やテキストもそれぞれのサイト毎に用意しなければなりません。デバイス毎に作り込みが出来るメリットはありますが、逆にデバイス毎に管理運用をする手間が発生するデメリットがあります。

レスポンシブとは
分離構成とは反対に、1HTML/1URLで構成されたサイトのことです。デバイス毎に管理する必要がないため、運用の一元化を可能にします。またGoogleが正式に推奨しているサイト構成でもあるため、SEO面でのメリットも強いのが特徴です。

詳細の解説は「ECサイトASP比較~マルチスクリーン対応ECサイトASPの比較ポイント~」をご確認ください。
まずは最もGoogleに準拠し生産性の高いマルチスクリーン対応方法がレスポンシブであるため、レスポンシブECサイトに移行することを検討する必要があります。前章でご紹介したモバイル中心思考になり、レスポンシブECサイトへ移行を完了すれば、マルチスクリーンにも対応できるため、わざわざ何らかの対策を打つ必要はなくなります。
ではすぐにレスポンシブECサイトへ移行できない場合の対応はどうでしょうか。よくある3つのケースに分けて検討してみます。
1:未だスマホ対応ができていないECサイト(PCサイトはある場合)

スマホ対応が出来ていないECサイトはまず、スマホサイトを作らなければなりません。それもコンバーターなどの自動変換やASPの機能として提供されている簡易的なスマホサイトではなく、きっちりとPCサイトと同等のコンテンツを用意したスマホサイトを用意する必要があります。
なぜなら今回のモバイルファーストインデックスでの対応として、Googleは公式ブログでも以下のように記載しています。
Search Console でデスクトップ版のサイトしか確認していないサイト所有者は、モバイル版のサイトの追加および確認を行ってください。
ユーザー満足度の観点から見ても、スマホで検索したECサイトの表示がデスクトップ版しかなかったとしたら、そのまま購入まで進めようと思うでしょうか?わざわざ指でピンチして商品詳細を確認したり、小さなフォームに入力するのはストレスでしかありません。まずはスマホ対応が必須です。
しかし、上記のような対応(PCサイトにプラスして、スマホサイトを作る)の場合、今後ずっとPCサイト、スマホサイトの更新・運用が必要となり生産性が著しく低くなってしまいます。このような対応ができるのは本当にお金と時間に余裕のある会社しか現状は出来ていません。
そもそも、前章で説明したモバイルファーストではないので、PC中心の運用から脱却できていないため、中期的に見ると売上は下降していきます。
結論としてはわざわざスマホ対応をするコストと手間があれば、レスポンシブで対応した方が中期的に見てもメリットは大きいので、システムを見直して移行をしなければなりません。
2:スマホECサイトはあるが簡易的なスマホECサイト

次に簡易的な対応をしているスマホサイトですが、モバイルファーストインデックスへの対応の前に、そもそもこのような対応もユーザーの満足度が低いと考えなければいけません。簡易で情報量の少ないECサイトでは、ユーザーの満足度を高めることができず、結果売上にも繋がりません。
このようなサイトは、PCサイトと同等のコンテンツを用意し、また今後はPCサイトへのリソース配分をスマホと逆転させる必要があります。モバイルファーストではスマホサイトを中心の運用を実施し、PCサイトは手がまわればで問題ありません。
またモバイルファーストインデックスの視点で見ると、前述のようにモバイルファーストインデックス導入後は、スマホサイトのコンテンツでページが検索結果の順位決定の要素となります。スマホサイトのコンテンツがPCサイトに比べて簡易的になっていると、検索結果の順位で評価が下がってしまう可能性も大いにあります(3で詳細を解説します)。どれだけPCサイトを充実させても意味がありません。
こちらもモバイルファーストインデックスの観点、ユーザー満足度の観点から見ても、簡易的ではない充実したスマホECサイトを提供する必要があります。
しかし充実したスマホサイトも提供するには、分離構成での運用の場合、PCサイト、スマホサイトの更新・運用が必要になり生産性が著しく低くなってしまいます。リソースがないためスマホサイトが簡易になっていたので、リソースの配分をスマホをメインにすれば、今度はPCが疎かになってしまいます。
結論としては、スマホ中心でPCは放置でも問題ないECサイトはこれまでの運用の逆でも問題ありませんが、PCサイト(タブレット等も)を重要視するのであれば、スマホ強化のタイミングでマルチスクリーンに効率的に対応可能なレスポンシブへ移行させなければなりません。
3:スマホECサイトをPCとは別にしっかり作り込んでいるECサイト
PCサイト、スマホサイトをそれぞれ作り込んでいる事例。デザイン性も高くユーザー満足度も高い。スマホサイトをPCサイトとは別にしっかりと作り込んでいるECサイトは、一見ユーザー満足度も高く効果も高いように思われがちですが、逆にそれが仇となる可能性もあります。今一度、PCとのコンテンツ格差をなくすことを実施しなければなりません。たとえば「2」でも触れましたが、以下のようにスマホサイトとPCサイトでコンテンツ格差が生じると検索順位に影響を及ぼす可能性もあります。
コンテンツ格差が検索順位に影響する
Googleの中の人(Gary Illyes氏)はTwitterでユーザーからの質問にこのように答えています。
Q:モバイル向けページでコンテンツを省略しているとしたら、悪影響が出るか?
A:そのコンテンツがページにないのであれば、(そのコンテンツに関連することで)上位表示することはかなり難しくなるだろう。
@denstopa @krystianszastok well yeah, if the content is not on the page, it's pretty hard to rank it
— Gary Illyes ᕕ( ᐛ )ᕗ (@methode) 2016年11月5日
出典:Google、モバイルファーストインデックスの導入予定を正式発表。スマホ向けページを検索の評価対象に。SEOへの影響は?
モバイルファーストインデックス導入後はPCサイトにあるコンテンツが、スマホサイトに無い場合は検索結果の上位に表示することは難しくなります。
一昔前までは、スマホサイトとPCサイトでは表示内容をそれぞれカスタマイズした方がよい場合もありました。しかしデバイスの垣根がなくなり、同じサイト、同じURLを別のデバイスで閲覧する「引継利用」を頻繁に行う現在の利用トレンドやGoogleの動向からしても、もはやデバイス毎に大きく体験を分けることはユーザー満足度の低下に繋がります。
さらにサイト運営の観点からも生産性の低下にもつながり、その結果ECサイトとしての競争力を弱めていくことになってしまいます。
結論としては、スマホサイトを別で作っているECサイトもデバイス間でのコンテンツ格差をなくしていく必要があります。既にデバイス毎にページを分けたECサイトにメリットはなく、現状ではデメリットしか存在しません。中期的な競争で勝つためには生産性の悪い、旧来型のスマホ対応を止めて、生産性の高いレスポンシブサイトに移行しなければなりません。
ショップの生産性が上がり、且つあらゆるデバイスに対応することで、ユーザーのECサイト体験の満足度を向上させることこそ、社会的使命は大きいはずです。
結論
もう一度「モバイル中心思考へシフト」することと、「レスポンシブへシフト」することが重要です。
ECサイト構築運営をする上でのモバイルファーストインデックスの対策は、ユーザーとのコミュニケーションの全てを「モバイル中心思考」へシフトさせること、その対策のためには、関わる人の意識を変えることが重要となります。例えば、、
- EC事業そのもののビジネスモデル、組織、コンセプト、人員体制をモバイル中心にシフトし、浸透させる
- ECサイトのデザイン、構築、システム設計、集客、運営に至るまでを全てモバイル中心にシフトさせる
- 旧来型のPC中心のECプラットフォームから、モバイルを中心に設計されたモバイルファーストなECプラットフォームへと変更する
です。
ECサイトの具体的なモバイルファーストインデックスへの対応方法は、短期的にはそれぞれのおかれているECサイトの状態により異なりますが、PCサイトとコンテンツ格差のないスマホECサイトの再構築が必要です。その再構築方法として、ECサイトの生産性を高めるのに最適なのが「レスポンシブ」であり、検討すべきは「レスポンシブ」へシフトすることです。
またレスポンシブへのシフトを検討するなかで、既に運営中のサイトをレスポンシブへ移行出来ない課題として挙げられるのが、「システム変更に伴うデータの移行」などです。しかし実際にはデータ移行や費用に関しても大きな問題ではありません。実際ほとんどのデータ(顧客情報、会員ID、パスワード、購入履歴、レビュー、商品情報や画像、HTMLソースなど)は移行可能で、費用もPCサイト、スマホサイトを構築するよりも安価なケースがほとんどです。
詳細の解説は「ECサイトをレスポンシブに移行する方法~売上と効率が激増~」をご参考ください。
それよりも中長期的に、ユーザー満足度を高め、ECサイトを更に拡大していくことを意識してアクションプランや意思決定をしていかなければなりません。
またこれから新たにECサイトを構築する場合は、よほどの理由がない限りレスポンシブにするべきです。