前回記事(売れ続けるスマートフォンECサイト構築(ミッション・ビジョン・コンセプトの設定方法)ではスマートフォンECサイト構築で重要なミッション、ビジョン、コンセプトを形式知にするポイントを解説しましたが、それらを具体的にECサイトに展開して初めて「スマートフォンECサイトに魂が宿り、当該ECサイト自らが売上を拡大する」ことができます。今回はその具体的な展開方法で重要な2つのポイントを記載します。
1つ目はミッション、ビジョンという背景から生まれる『コンセプト』についてさらに深堀し、スマートフォンECサイトに展開することです。2つ目は『サービスの特徴(強み=差別化のポイント)』について明文化しスマホECサイトに展開することです。私たちがクライアント様のスマホECサイト構築をする場合もこれら2点についてはお時間をいただき、直接ヒアリングして(場合によっては一緒に)整理させていただきます。
時間が十分ある方はSWOT分析にて強み・弱み・機会・脅威まで評価を行う方がよいのですが、現実的には弱みは恐らく十分に認識されているであろうし、機会や脅威については主に外的要因に対することのため、スマートフォンECサイト構築において、まずは内的要因である強みを明文化しサイトへ展開するだけでも十分です。
▼1.ショップコンセプトの明文化
ショップコンセプトとは『誰に、何を、どのように』ということを整理することだと前回記事でお話ししました。それだけではスマートフォンECサイトの企画に展開できないためさらに深く掘り下げます。以下の3点を再考してみてください。
1.メインターゲット顧客とは?(誰に)
2.主力商品やサービスは?(何を)
3.お客様にどのような付加価値を提供するのか?(どのように)
メインターゲット顧客はできるだけ具体的に書き出します。例えば『20代から30代の女性主婦で0歳から5歳くらいの小さな子供さんがいて、バリバリ働く方』といった感じで出来る限り具体的に明文化します。メインターゲットですのであまり広げずに、最も自社商品・サービスを利用するユーザを明確にイメージしてください。もし、複数のメインターゲット顧客のイメージがある場合は、優先順位をつけて別々に書き出してください。
次に、それらのメインターゲット顧客に対して最も主力となる商品を書き出します。これもできれば小さなカテゴリ、もしくは商品名まで絞り込んでください。
スマートフォンというモバイル端末ではこのコンセプトの『絞り込み』が非常に重要となります。なぜならば以前記載したモバイルECの3つの消費特性により、ユーザに多くの情報を訴求できないため、ユーザが訪問してくる導線に合わせて情報を洗練させてランディングページで訴求する必要があるためです。ですから小さな画面で『あれもこれもの商品』ではなく、『この商品!!』と明確に訴求した方が消費者の心に刺さるのです。
特に認知度が低いスマホECサイトのオープン当初の場合、商品数が多いことよりもこれらのコンセプトが明確でわかりやすいサイトの方が売上は上がりやすい傾向があります。なぜならターゲットが明確で訴求力が高まるためプロモーション選定やサイト内のCVRが高まりやすいためです。
オープンからしばらくたって、リピートユーザがついてきてくれれば、商品を横展開してライナップを増やし、最終的にPC同等の品揃えにする方が、回遊性も高まり良いとは思います。その際スマホでは『選びやすさ』の追求も必要となります。いずれにしてもオープン当初は『コンセプト』が伝わりやすくする工夫が必要です。
aishipでサイト構築のお手伝いをさせていただいた以下のe宝石屋様の事例をご参考ください。PCサイト以上にモバイルではコンセプトの伝わりやすさを考慮し、PCでは「ペアリング・ペアネックレスの通販」のところ、モバイルでは「ペアリング」に絞り、ショップ名まで「ペアリング屋」と伝わりやすい工夫をしています。
[メインターゲット顧客]20代、30代、彼氏・彼女がいる、男女、プレゼント需要
[メイン商品]ペアリングに焦点を当てて、ペアジュエリー需要を狙う
※PCで訪問した場合とスマホで訪問した場合を比べて見てください。
↓モバイルサイトでは
3の「お客様にどのような付加価値を提供するのか?」という点については、例えば前回記事(アスクル様の例)のように『明日、注文の商品が届くという利便性を提供』という感じで、当該ECサイトを通じて世の中に創出したい価値を明文化できると最高でしょう。
▼ 2.サービスの特徴の明文化
サービスの特徴とは“自社の強み”とか“差別化の点”とも言います。サービスの特徴は特にECサイトのCVRを高めたり、リピーター(ファン)を獲得する上で非常に重要となります。
このサービスの特徴は主観的ではなく、『他社と比べて』『世の中で』『業界でも』というように、客観的尺度を持って整理する必要があります。特徴や差別化というものは、“他人”があって初めて成り立つものだということを忘れずに考えてください。『他と比べて***』という方がお客様もわかりやすくなります。
具体的な方法は、まずブレーンストーミングを実施してください。できれば数名で行います。(ブレーンストーミングの方法については調べてください)そこで出てきた特徴を整理して優先順位を決めます。優先順位の決め方がわからなければ「その特徴はお客様にどれくらい役立つか(経済的メリットがあるなど) 」、「その特徴は他社よりも優れているか」という2つの点で優先順位を決定してみてください。
そして、小さなモバイルの画面で効果的に特徴を訴求するために、これらの特徴をさらに絞り込む必要があります。上記のような優先順位の付け方や伝え方(文字か画像かなど)も考慮し最終的に表現する特徴は2~3件程度、多くとも5件程度に絞り込んでください。
▼スマートフォンECサイトへの展開
実際には上記のコンセプトや特徴以外にデザインテイスト(雰囲気、カラーイメージなど)の情報と合わせて、ワイヤーフレーム上でどのようにコンテンツを配置するかを考えます。特にファーストビューのレイアウト設計が重要となり、これらの情報上手くファーストビューで表現するようにTOPページのコンテンツ配置を考えます。この作業が「スマートフォンECサイトに魂が宿り、当該ECサイト自らが売上を拡大する」ための極めて重要な作業となります。
例えば、『品揃え国内最大級』という特徴があるのであれば、モバイルでの商品の選び難さを考慮して、充実したカテゴリ検索を上部コンテンツにする工夫が必要です。
以下はカラコン通販のサンシティ様(http://www.3city.jp/)の例です。ファーストビューで自社の強みである「品揃え」を訴求し、特徴を象徴するコンテンツの「カラコンの試着アプリ」や「人気の秘密(他社より優れている点のまとめ)」の直下には以下のような「商品を探しやすくするコンテンツ」を配置されています。
また、このようにコンテンツ構成を考える際、メインターゲット顧客が複数ある場合、無理をせずTOPページは優先順位1位のメインターゲット向けコンテンツとして、優先度2位以下のターゲットには別途ランディングページを設けた方がベターです。
無理に複数のメインターゲット向けの構成を小さなモバイル画面で表現しようとすると、両者への訴求力が下がり、結果的にデザインパワーを低下させてしまいます。モバイルECの場合「ターゲットや訴求方法が異なる場合はページを分ける」という割り切りが重要です。
▼おわりに
これらの方法でスマートフォンECサイトに魂を吹込むことで、当該ECサイト自らが売上を拡大するようになります。またこれらの事柄は『一度決めたからそれでOK』という訳ではありません。例えば特徴は他社が同じことをすれば特徴が特徴ではなくなりますので、絶えず特徴を出し続けるためには「特徴が変化する」こともあるでしょう。
これらの方法はaishipでスマートフォンECサイト構築の際のワイヤーフレーム構築をする際に実施させていただきます。スマートフォンECサイト構築に関してはお気軽に『aishipスマートフォンECサイト構築相談窓口』 フリーダイヤル0120-173-163、問合せフォームへご相談ください。