「店舗受取サービス」は、顧客がオンラインで商品を注文・予約し、実店舗で受け取る仕組みです。「BOPIS」や「クリック&コレクト」、「店頭受取」とも呼ばれ、食品、アパレルをはじめ、家具・家電、スーパーマーケットなど、さまざまな業態で導入が進んでいます。
このサービスの特徴は、オンライン予約・注文の利便性と実店舗の即時性を組み合わせている点です。
顧客は配送を待たずに商品を受け取れるため、急ぎの買い物にも対応できます。
また、店舗側にとっても、配送コストの削減や店頭での追加購入(ついで買い)の機会創出といったメリットがあります。
本記事では店舗運営事業者が店舗受取サービスを導入する際に参考すべきポイントとして、以下の内容を解説します。
・店舗側と顧客側のそれぞれのメリット
・よくある導入課題と解決策(店舗とEC運営・店舗のみ運営)
・具体的な導入フロー
・導入方法別の事例
また、店舗受取サービスを導入する際、事業の運営形態や状況によって直面する課題が異なるため、「実店舗とECサイトを運営している事業者」と「実店舗のみを運営している事業者」のそれぞれの場合での課題と解決策、導入フローについても詳しく紹介します。
店舗受取サービスのメリット
店舗受取サービスは、店舗運営者と顧客の双方にメリットをもたらします。ここでは、それぞれの立場から具体的な利点を詳しく解説します。
店舗側のメリット
1. 新規顧客の獲得
オンラインで注文できる仕組みを導入することで、今まで来店する機会がなかった新規顧客の獲得につながります。特に、実店舗の近隣に住んでいるものの、普段は訪れない顧客層にアプローチできる点が魅力です。
例えば、忙しくて買い物に行く時間がない人や、小さな子どもがいて長時間の買い物が難しい人などが、事前にオンラインで注文し、隙間時間に受け取ることで、利用しやすくなります。
これにより、これまでリーチできなかった顧客との接点を増やすことが可能です。
2. 売上向上のチャンス(ついで買い効果)
顧客が店舗で商品を受け取る際に、店内を見て回ることで、追加購入(ついで買い)を促すことができます。
例えば、アパレルショップでオンライン注文した洋服を受け取りに来た顧客が、店頭に並ぶ新作を見て追加で購入するケースや、スーパーで事前に予約した商品を受け取る際に、特売品やお菓子などを購入することがあります。
この「ついで買い」効果により、店舗側は客単価を向上させるチャンスを得られるため、多くの企業がこのメリットを活かし、店舗受取エリアの近くにプロモーションコーナーを設置するなど、売上アップの工夫をしています。
実際に、2020年10月にECサイトを立ち上げた衣料品チェーン大手の「しまむらグループ」では店舗受取サービスの効果として以下のように報告しています。
店受取りの効果として、通常の店舗でのお買い物は、買上点数が約 3 点、一点単価が約 900 円、客単価が約 2,700 円に対し、ECの店受取りの場合は、EC注文分が約 1.5 点、店舗でのお買い物が約 3 点の合計で買上点数が約 4.5 点、客単価が約 4,800 円です。
ECから店舗への送客による買上点数向上が店舗売上の向上に寄与する可能性が高いため、店舗において、関連販売で何を売っていくか、レイアウトをどのようにするか等を研究しています。
出典: しまむらグループ「2021年2月期決算説明会質疑応答要旨」
3. 物流コストの削減
通常ECサイトで販売を行う場合、商品の配送には物流コストがかかります。
しかし、ECサイト上で店舗受取を選択できるようにしておくことで、配送にかかる費用を抑えることができます。
特に、昨今の物流費高騰の影響を受けている事業者にとっては、大きなコスト削減策となります。
例えば、EC注文の一定割合を店舗受取に誘導できると、宅配便の利用が減ることで、その分のコストを削減できます。
また、配送作業の負担が減ることで、物流業務の効率化も期待できます。店舗での在庫管理をうまく活用すれば、倉庫からの出荷コストを削減しながら、スムーズな商品受け渡しを実現できます。
4. DX化・オムニチャネル・OMOの推進(業務効率化とマーケティング強化)
店舗受取サービスの導入は、DXやオムニチャネル・OMOの推進に繋がります。
例えば、今まで全て店舗でとっていた受注の一部をオンラインでの注文に代替できるため、店舗業務の効率化が可能になります。
また、顧客の注文データを分析することで、人気商品や購入傾向を把握し、品揃えの最適化やプロモーション施策の強化に役立てることもできます。
さらに、LINE公式アカウントやメルマガを活用して、顧客との接点を強化し、リピーター獲得にもつなげられます。
こうした取り組みを進めることで、店舗の競争力を高め、長期的な成長につなげることができます。
OMOやオムニチャネルについては具体的施策や成功事例を以下の記事で解説していますので、ぜひ併せてご参考ください。
OMOとは?具体的施策4選と成功事例|O2O、オムニチャネルとの違いも解説
顧客側のメリット
1. 送料の節約
店舗受取を利用することで、配送費用をかけずに商品を購入できます。
特に、小さな買い物や単価の低い商品を購入する場合、送料が割高に感じられることがありますが、店舗受取ならその心配がありません。
例えば、オンラインショップで1,500円の商品を購入する際に、500円の送料がかかると、合計2,000円となり、購入をためらうケースがあります。
しかし、店舗受取を選択すれば、送料の負担なしでお得に買い物ができるため、利用しやすくなります。
2. 利便性の向上(好きな時間に受け取れる)
配送を利用すると、受け取り時間が指定されることが多く、在宅していなければならない場合があります。
しかし、店舗受取なら、自分の都合の良い時間に商品を受け取りに行けるため、より自由度が高くなります。
例えば、仕事帰りや買い物のついでに受け取ることができるため、配送のタイミングを気にする必要がなくなります。
また、飲食店などでは「事前注文+店舗受取」を利用することで、待ち時間を短縮でき、スムーズに商品を受け取ることが可能です。
3. 返品・交換がスムーズ
オンライン購入では、「思っていたものと違う」「サイズが合わない」などの理由で返品や交換が必要になることがあります。その場合、配送での返品手続きをすると、手間や時間がかかりますが、店舗受取なら、購入時にその場で商品を確認し、問題があればすぐに交換や返品の対応が可能です。
例えば、アパレル商品をオンラインで注文し、店舗受取を選択した場合、店頭で試着してサイズが合わなければ、すぐに別のサイズに交換できるため、利便性が大幅に向上します。
このように、購入後の対応がスムーズになる点も、店舗受取の大きな魅力のひとつです。
店舗受取サービスは、店舗を運営する事業者にとっては新規顧客の獲得や売上向上、物流コスト削減のメリットがあり、顧客にとっては送料節約や利便性向上、返品・交換のしやすさといったメリットがあります。
店舗と併せてECを運営している事業者はもちろん、現在ECを運営していない事業者でも電話注文やLINE予約などから始めることで導入しやすく、顧客満足度の向上や競争力強化のために、積極的に取り入れる価値があるサービスといえるでしょう。
店舗受取サービス導入の課題と解決策
店舗受取サービスを導入する際、事業の運営形態や状況によって直面する課題が異なります。ここでは、「実店舗とECサイトを運営している事業者」と「実店舗のみを運営している事業者」の2つのケースに分け、それぞれの課題と解決策を解説します。
1. 実店舗とECサイトを運営している事業者
課題1. 在庫管理の複雑化
<問題点>
ECと実店舗の両方で販売する場合、在庫をどこで管理するかが課題になります。
・ECサイトで販売した商品が実店舗の在庫と競合し、在庫切れが発生しやすい。
・店舗在庫とEC在庫が別々に管理されていると、注文処理のミスが発生しやすい。
<解決策>
① リアルタイム在庫管理システムの導入
在庫一元管理システムを導入して店舗とECの在庫を一元管理し、リアルタイムで在庫状況を把握することで在庫を標準化して機会損失を防ぐことができます。
在庫管理システムの導入ステップや比較選定のポイントについては以下の記事で解説していますので、ぜひ併せてご参考ください。
【2025最新】ECサイトの在庫管理システム8選を徹底比較【一覧表付】
② 倉庫在庫と店舗在庫の役割分担
店舗在庫は店舗販売と受取用に限定し、EC用の在庫は別途倉庫に確保することで在庫不足を防ぐことができます。
③ 自動更新機能を活用
ECサイトと店舗のPOSシステムを連携し、販売時に自動で在庫を更新できる仕組みを整えることで在庫切れや注文処理のミスを大幅に抑制できます。
店舗受取サービスを本格的に導入して業務フローを最適化するためには、いかに効率的にECサイトと実店舗の在庫を一元管理できるかが肝になります。
弊社の提供するクラウド型ECサイト構築ASP「aiship」では、様々な在庫一元管理システムと標準連携しているため追加の開発等は必要なく本格的な店舗受取サービスを実現することができます。
また2025年3月よりAPIを公開しており、店舗のPOSシステムや在庫管理ツールなど、さらに幅広いシステムとAPIを利用したリアルタイム連携が可能です。
aishipの「店舗受取機能」および「API」の詳細は以下ページをご確認ください。
店舗受取サービスはクラウド型ECカートシステムにて実現|aiship
APIを利用して機能を拡張するMulti connect|aiship
課題2. 店舗受取のオペレーション負担
<問題点>
・オンライン注文の商品を店舗で管理し、スムーズに受け渡す仕組みがないと、スタッフの負担が増大する。
・受け取りの際に注文確認や決済処理が必要になり、レジ業務が煩雑になる。
<解決策>
① 店舗専用の受取カウンターの設置
通常のレジとは別に、店舗受取専用のカウンターを設けることで、効率的な受け渡しが可能になります。
② シンプルな受取プロセスの構築
注文番号やQRコードを活用することで、スタッフがスムーズに注文確認できます。
③ オムニチャネル対応のPOSシステム導入
ECと店舗の情報を一元化し、店舗スタッフが注文状況をすぐに確認できる環境を整えることでスタッフの負担を軽減し、効率的なオペレーションで運用できます。
課題3. ついで買い(クロスセル)を促進する施策が必要
<問題点>
・店舗受取を利用する顧客は、事前に商品を決めているため、うまく導線を設計できていないと店内での追加購入(ついで買い)が発生しにくい。
・店舗側でクロスセルを促す仕組みがないと、売上向上につながらない。
<解決策>
① 受取エリア付近にプロモーションスペースを設置
あわせ買いしやすい商品や店舗限定商品などを受取エリア付近に陳列することで、追加購入を促すことができます。
② 受取完了時にデジタルクーポンを提供
例えば、次回の購入時に使える割引クーポンを発行し、リピーター化を促進する方法があります。
③ ECサイト上で「おすすめ商品」を表示
注文時に「この商品と一緒に購入されている商品」を提案し、認知させておくことで店舗来店時にあわせ買いをしてもらいやすくなります。
2. 実店舗のみ運営している事業者の場合
課題1. 注文受付システムがない
<問題点>
・ECサイトを運営していないため、オンライン注文の受付方法が確立されていない。
・電話注文やFAX注文では手間がかかり、業務負担が大きい。
・店舗受取を本格的に運用するには、顧客がスムーズに注文できるオンラインの仕組みが必要。
・しかし、ECサイトの構築にはコストや運用負担がかかるため、導入に踏み切れない事業者も多い。
<解決策>
① 低コストで始められるECカートを利用する
aiship、Shopify、カラーミーショップなどのASP型ECカートを活用すると、初期費用を抑えつつ、短期間でECサイトを開設できます。
ASP型ECカートを選定する際は店舗受取に対応できる機能(配送方法で「店舗受取」を選択可能、「事前決済」に対応など)が標準搭載されているサービスを選びましょう。
弊社の提供するクラウド型ECサイト構築ASP「aiship」では「店舗受取機能」を標準搭載しているため追加開発費用は不要で安価に店舗受取サービスを導入することができます。
「店舗受取機能」では複数店舗の登録・表示や店舗ごとの休業日設定、商品ごとに取り扱い店舗の設定をすることも可能です。
またECカートシステムの特性を生かし、クレジットカードやスマホ決済等による事前決済にも対応しています。
aishipの「店舗受取機能」の詳細は以下ページをご確認ください。
店舗受取サービスはクラウド型ECカートシステムにて実現|aiship
ECカートは単なる商品の購入プロセスをサポートするだけでなく、売上や業務フロー、運営コストにも大きな影響を与えます。
店舗受取サービスを含め、自社の事業をどのような規模や方向性で展開をしていくのかを定め、適切な情報を元に比較し、選定を行うことで売上向上の可能性を最大限高めることができます。
ECカートの選定にあたっては、以下の記事もぜひご参考ください。
無料で使えるカートから、高機能ASP型、オープンソース型、パッケージ型まで、各種ECカートシステムの特徴やメリット・デメリットを詳しく比較し、最適な選択肢を見つけるためのポイントを解説しています。
【2025最新】ECカートシステム22選を徹底比較【一覧表付】
② 予約注文型のシンプルな店舗受取専用フォームを作成する
管理は少し煩雑になりがちな方法ですが、ECサイトではなく「店舗受取専用フォーム」としてシンプルな予約フォームを作る方法もあります。
例えば、Googleフォームを利用して簡易的なフォームを作成したり、LINE公式アカウントやSNSを活用することで顧客が事前に注文を入れられる環境を整えることができます。
③ 店舗受取機能があるモール型プラットフォームを利用する
Yahoo!ショッピングや楽天市場などのECモールに出店し、店舗受取オプションを設定することで、店舗受取サービスを始められます。
楽天市場の店頭受取サービス
Yahoo!ショッピングの店頭受取サービス
また飲食系の店舗であれば「Uber Eats」「出前館」などのテイクアウト機能を活用するのも選択肢の一つになります。
課題2. 商品管理・受取準備の負担
<問題点>
・注文内容をスタッフが手作業で管理する必要があり、ミスや受け渡しの遅延が発生しやすい。
・受け取りの際に顧客を待たせると、満足度が低下する。
<解決策>
① シンプルな受取フローの確立
事前注文のリストを作成し、受取専用スペースに整理しておくことで、スタッフの負担を軽減できます。
② 店舗側での注文確認と在庫確保のルール化
例えば「受取日の前日までに在庫を確保し、ピッキングリストを作成する」など、業務フローを標準化することで、受け渡しのミスや遅延を防止できます。
③ デジタルツールの活用
POS等の店舗の商品管理システムとECカート等の注文受付システムで連携を行い在庫を一元管理できるとスムーズな業務フローを構築できます。
またシステム上での自動連携が難しい場合、Googleスプレッドシートなど一部手動で管理する方法もあります。
課題3. 受取サービスの認知度向上
<問題点>
・実店舗のみの運営では、オンラインでの情報発信が少なく、店舗受取サービスの存在が顧客に伝わりにくい。
・せっかく導入しても、利用者が増えなければ効果が薄い。
<解決策>
① SNS・LINEを活用した情報発信
店舗のSNSやLINEで「店舗受取サービス開始!」などと定期的に情報発信を行うことで、認知度を高めていくことができます。
② 店内ポスターやPOPで告知
レジ前や入口に「オンライン注文OK!店舗受取できます」のようなPOPを設置し、来店客にアピールすることで店舗受取サービスの利用者を増やすことができます。
③ 限定キャンペーンを実施
「初回利用で10%オフ」や「○○円以上の注文で特典プレゼント」などのキャンペーンを実施し、利用を促進しましょう。
店舗受取サービスの導入には、それぞれの事業形態や状況に応じた課題がありますが、以下のポイントを意識して適切な解決策を講じることで、スムーズな運用が可能になります。
<ポイント>
・ECサイトを運営している事業者
在庫一元管理や、受取オペレーションの最適化、ついで買いの促進が重要
・実店舗のみを運営している事業者
自社の運用に合った注文受付システムの導入や、受取業務の効率化、認知度向上が重要
店舗受取サービスの導入方法・ステップ
店舗受取サービスを成功させるには、適切な準備と運用が必要です。
ここからは以下の導入ステップを1つずつ具体的に解説していきますので、それらを参考にしてスムーズに導入を進めましょう。

ステップ1:現状の整理・分析
まずは、自社のビジネス環境を整理しましょう。
また併せて分析も行い、店舗受取を導入する意義を明確にしましょう。
<確認ポイント>
・顧客層の特性
新規顧客とリピーターの割合、年齢層、購買傾向 など
・購買チャネルの傾向
実店舗とECの割合、電話予約はどのくらいあるか など
・商品の特性
受取時に必要な確認事項、在庫管理はどうするか など
・スタッフの負担
新たな業務フローを取り入れるリソースや余裕があるか など
これらをもとに、どのような店舗受取の形態が最適かを検討します。
ステップ2:注文受付の方法を決める
注文を受け付ける方法を決める際は、大きく分けると「とりあえずコストをかけずに始める方法」と「専用システムを導入して本格的に始める方法」の2つの選択肢から考えることが重要です。
1. ECサイトを運営している事業者の場合
すでにECサイトを運営している場合、ECサイトで「店舗受取」機能を導入するのが効率的です。
<導入方法>
■ ECカートの機能を活用する
・aiship、Shopify、カラーミーなどのECカートでは「店舗受取オプション」を提供している
・自社の利用するECカートが店舗受取機能に対応していない場合、カートのリプレイスを検討する
・運用の最適化を考えると、受取可能な店舗や日時を設定できる機能があるサービスを選ぶのがおすすめ
■ 「配送方法」の選択肢に「店舗受取」を設ける
・商品購入時に「配送」だけではなく「店舗受取」も選択できるようにする
・事前決済を可能にすることで、店舗でのオペレーションを軽減できる
ECサイトで店舗受取機能を導入する際は「店舗受取が可能である」ことや「どこで受け取れるか」を商品詳細ページの段階から明示しておきましょう。
店舗受取に対応していて近くの店舗で受け取れることがカートページまで進まないとわからない状態だと、カートインを躊躇ってしまい途中で離脱してしまう可能性が高まります。
そのため、できれば商品詳細ページで「店舗受取」か「配送」かの選択や、店舗受取を選択した場合は「受け取る店舗」を選択できるようにすることをおすすめします。
<イメージ>
弊社の提供するクラウド型ECサイト構築ASP「aiship」では2025年5月に「
店舗受取機能
」をアップデートして、
商品詳細ページで店舗受取の詳細を選択できる機能の提供開始を予定しています。
詳細についてはぜひ1度お問い合わせください。
お問い合わせはこちら
ECサイト経由で注文を受け付けることで、事前決済が可能になり、受取時のオペレーションがスムーズになります。
ECサイトへの店舗受取サービスの導入方法や事例については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご参考ください。
【事例7選】ECサイトへの店舗受取サービスの導入方法
2. 実店舗のみを運営している事業者の場合
現状ECサイトがない場合でも、店舗受取の注文を受ける方法としては、大きく分けて「低コストで始める方法」と「ECサイトを構築する方法」があります。
<低コストで始める方法>
■ 電話受付
・最も手軽に導入できるが、営業時間外は対応不可
■ LINE公式アカウント
・チャット機能を活用して予約を受け付ける
・LINE公式アカウントと連携できる予約システムを利用する(別途費用)
■ 簡易的なフォームを利用
・Googleフォームを利用し、注文内容を記入してもらう
・formrunやWordPress等のCMSで作成した簡易的なフォームを利用する
■ 低コストで使える予約システムを導入
・「STORES予約」「RESERVA」など、予約管理ツールを利用する
低コストで始める方法は在庫管理や事前決済ができないといった制限も多く、オンライン上で決済まで完了させて店舗では受け渡しのみにしたい場合など、希望する運用によっては実現できないこともあるため機能性の部分は十分に検証する必要があります。
<ECサイトを構築する方法>
■ 自社ECサイトを立ち上げる
・aiship、Shopify、カラーミーなど店舗受取機能を搭載しているECカートを利用して店舗受取可能な自社ECサイトを構築する
■ モール型ECサイトを活用する
・Yahoo!ショッピングや楽天市場へ出店する選択肢もある
通常のECサイトとしての運用は行わず店舗受取サービスのみで運用したい場合や、受け取る店舗や日時をなど詳細を指定して注文を取りたい場合など、希望の運用が実現できそうかを重点的に確認・検証することをおすすめします。
一般的に、モール型ECサイトは自社ECサイトと比べて構築の自由度が低いため、特に注意が必要です。
また、想定される注文数が少ない場合は費用対効果を合わせるため「まずは電話やLINEでスタートし、注文が増えたらECカートを導入する」という段階的な導入も検討しましょう。
ステップ3:店舗オペレーションの設計
店舗受取をスムーズに運用するために、オペレーションを最適化しましょう。
<主な対応事項>
■ 受取時間の設定
・混雑を避けるため、事前に受取時間枠を決める
・例えば「午前中」や「15:00〜18:00」のように設定
■ スタッフの配置
・店舗内のリソースが十分な場合は、店舗受取専任スタッフを配置するのが理想的
・難しい場合は、ピーク時間帯だけ人員を調整する等の工夫が必要
■ 受取専用カウンターや看板の設置
・店内のどこで受け取るかを明確にし、わかりやすく案内する
・「店舗受取専用カウンター」を設置するとスムーズ
注文が増えた場合は、受取専用カウンターでの人員配置に加えて、受取専用のQRコードやバーコードを発行し、スキャンするだけで受け取り完了の処理をするなどのオペレーションを最適化する工夫も検討していきましょう。
ステップ4:顧客への告知
店舗受取サービスを開始したら、しっかり告知して利用を促進しましょう。
<効果的な告知方法>
■ 店頭での告知
・入口やレジ周りに「店舗受取はじめました!」などのポスターを設置
・チラシやショップカードを配布し、詳細を伝える
※ECサイトや予約フォームのURLをQRコード化してポスターや配布物に貼るなど、店舗受取サービスへの導線を整備しておくことが重要
■ SNSでのアピール
・Instagram・Facebook・X(旧Twitter)で「〇〇の予約受取が可能になりました!」などと告知
・実際の受取の流れをストーリーや投稿で紹介
■ LINE公式アカウントを活用
・「店舗受取クーポン」などを配信し、利用を促す
■ 常連客へのPR
・既存の顧客に対し、対面やメールで直接案内
・「〇〇さん、次回からオンラインで購入して店舗受取もできますよ!」と伝えるだけでも効果的
「期間限定の割引」や「初回利用特典」など限定プロモーションを実施することで、利用を促進しやすくなります。
店舗受取サービスの導入は、「現状分析」→「注文受付方法の決定」→「オペレーション設計」→「告知」というステップを踏むことで、スムーズに展開できます。
店舗受取サービスの導入事例
ここからは店舗受取サービスの導入方法を「LINE予約・簡易的なフォームで導入」「自社ECサイトに導入」「モール型ECで導入」の3パターンに分類して、それぞれについて具体的な事例を紹介します。
LINE予約・簡易的なフォームでの導入事例
レジーナスイーツアンドベーカリー

https://page.line.me/195hzyhk
「レジーナスイーツアンドベーカリー」は、食のセレクトショップでアフタヌーンティーやホールケーキなどスイーツを取り扱っています。
店舗受取サービスに関しては、LINE公式アカウントで注文、予約を受け付けています。
越後家多齢堂

https://echigoya-kasutera.com/contact/
「越後家多齢堂」は、カステラを販売するショップです。オンラインショップでの販売も行なっていますが、店舗受取サービスに関しては簡易的なフォームからのみ予約を受け付けています。
自社ECサイトでの導入事例(aiship利用)
マールブランシュ

https://www.malebranche-shop.jp/
京都北山「マールブランシュ」は、京都土産で有名なスイーツを取り扱うショップです。
自社ECサイトで店舗受取サービスを提供しており、現在地から近くの店舗を検索して、受け取る店舗を選択することもできます。
また、店舗限定商品など特別な商品も取り扱っており、受け取り時に他の商品を購入する顧客も多くいます。
ギフトプラザ

https://www.giftplaza-online.com/
ギフト専門店「ギフトプラザ」は、自社ECサイトでユーザーに便利な店舗受取サービスを提供しています。
オンラインショップで商品を選んだ後、受け取る店舗と受取日時を指定することができるため、都合の良い時間にスムーズに商品を受け取ることができます。
また、ギフトとしてのラッピングや包装も受け取る際に確認できるため、安心して相手に贈ることができます。
オランダ家

https://orandaya.jp/
「オランダ家」は、ケーキや落花生パイなどの洋菓子を自社ECサイトで注文し、店舗で受け取れるサービスを提供しています。
こちらのECサイトでも、商品を選んだ後、受け取る店舗と受取日時を指定することができるため、都合の良い時間にスムーズに商品を受け取ることができます。
MULBERRY

https://patisserie-mulberry.com/
「MULBERRY」では、フルオーダーやセミオーダーによる一人ひとりの要望に合わせたケーキを自社ECサイトで注文し、配送か店舗受取かを選んで受け取ることができます。
モール型ECでの導入事例
Tokuriya(とくりや)

https://www.rakuten.co.jp/akebono/
「Tokuriya」は滋賀のお酒など”こだわりのもの”をギフトとして販売するセレクトショップです。
Yahoo!ショッピングで運営しているサイトで、配送か店舗受取かを選んで受け取ることができます。
お多福庵

https://www.rakuten.ne.jp/gold/nexsource/
「お多福庵」は、大福を中心とした和菓子を取り扱うショップです。
楽天市場で運営しているサイトで、配送か店舗受取かを選んで受け取ることができます。
まとめ
店舗受取サービスは、実店舗の強みを活かしながら、DX化やオムニチャネル戦略を進めることができる画期的な仕組みです。
☑︎ まずは小さく始めることも可能!
・電話やLINEで予約受付をスタート
・受取専用のカウンターやオペレーションを整備
・SNSや店頭告知で利用促進
☑︎ 本格的に導入・運用することでオムニチャネル実現へ!
・店舗受取サービスの本格導入なら専用機能を備えたECカートの利用がおすすめ
・ECと実店舗の情報を連携することでオムニチャネル戦略に繋がる
店舗受取サービスを導入することで、顧客の利便性を向上させるだけでなく顧客との接点を増やすことができるため、短期間での売上アップも期待できます。
これからの小売業の変化に対応するためにも、今こそ導入を検討してみましょう。
また先述の通り、弊社の提供するクラウド型ECサイト構築ASP「aiship」では「
店舗受取機能
」を標準搭載しているため、追加開発費用は不要で安価に店舗受取サービスを導入することができます。
店舗受取サービスの導入をご検討の事業者様は是非お気軽にご相談ください。
aishipに問い合わせてみる
また店舗受取サービスに限らず、実店舗とECサイトの垣根をなくし、両者をうまく連携させて実現できる具体的な施策については以下の記事で紹介していますので、ぜひ併せてご参考ください。
ECサイトと実店舗の連携で実現できる施策8選
ECサイトの構築・リニューアルをご検討の際は以下の記事もご参考いただけますと幸いです。
ECサイト構築の方法と手順|立ち上げ時に注意すべきポイントとは?【成功事例付】
ECサイトリニューアル成功のポイント|売上40%増の成功事例から手順・費用まで解説