近年、消費者の購買行動はますます多様化しています。スマートフォンの普及により、商品を調べる、比較する、購入するという一連の流れがオンラインで完結する一方で、実店舗で商品を手に取って確認したいというニーズも根強く残っています。こうした状況の中で注目されているのが、「ECサイトと実店舗の連携」です。
特にコロナ禍以降、非接触での購買ニーズが高まったことで、ネットで注文して店舗で受け取る「店舗受取(BOPIS)」や、ECサイトと連動した在庫確認・取り置きサービスなど、オンラインとオフラインをまたぐ購買体験が一般化しました。
また数年前には店舗で選んでネットで買う「ショールーミング」が話題になりましたが、最近は、ECサイトやSNSなどネットで商品を見つけてから店舗で買う「Webルーミング」も当たり前になってきています。
出典:
服の購入についての意識調査|BWRITE
こうした背景もあり、多くの企業において、実店舗とECサイトの垣根をなくし、両者をうまく連携させた「OMO型の施策」の実現が重要視されています。
本記事では、ECサイトと実店舗の連携について以下のポイントを詳しく解説します。
・連携により実現できる戦術と具体的施策
・連携する際に注意すべきポイント
・連携フローと具体的な連携方法
・参考になる成功事例
ECサイトと実店舗の連携を通じて、顧客満足度の向上や売上の最大化を図りたいとお考えの事業者の方は、ぜひご参考ください。
ECサイトと実店舗を連携するメリット
ECサイトと実店舗を連携させることで、単に販売チャネルが増えるだけでなく、顧客との関係性を深め、ビジネス全体のパフォーマンスを向上させることが可能になります。
ここでは、具体的な4つのメリットを解説します。
1. 顧客体験の向上
現代の消費者は、オンライン・オフラインを自由に行き来しながら購買行動を取る傾向があります。ECサイトと実店舗が連携することで、こうした行動に対応した「シームレスな購買体験」が実現できます。
例えば、実店舗で商品を手に取って確認した後に、ECサイトでゆっくり比較・検討して購入するという流れが一般化しています。
逆に、ECサイトで見た商品を店舗で確認し、その場で購入するケースも増えています。
このように、どちらのチャネルからでも同じサービスや商品にアクセスできる環境は、顧客満足度を大きく高めます。
2. データに基づいたマーケティングの実現
ECサイトと実店舗を連携することで、オンラインとオフラインの購買データや行動履歴を一元管理できるようになります。これにより、顧客ごとの嗜好や購入タイミング、来店頻度などの詳細な情報を取得可能です。
例えば、ECサイトで特定の商品を頻繁に閲覧している顧客に対して、近隣店舗の在庫情報を基に「試着予約」や「受取予約」、「店舗での体験イベント」などを提案すれば、購買意欲をより高めることができます。
こうしたパーソナライズされたプロモーションは、従来の一斉配信型マーケティングに比べて高い効果が期待できます。
3. 機会損失の削減
在庫情報や販売状況をリアルタイムで共有することで、欠品や販売機会の損失を最小限に抑えることができます。
例えば、ECサイトで在庫切れとなった商品でも、実店舗に在庫があれば「店舗受取」や「取り置きサービス」を案内することが可能です。これにより、顧客を他店や競合サイトに流出させず、確実に購買へとつなげることができます。
また、逆に店舗で在庫が不足している場合でも、EC在庫から配送手配ができれば、販売機会を逃さずに済みます。
4. 顧客ロイヤルティの向上
実店舗とECサイトの顧客体験が統合されることで、ブランドへの愛着や継続的な利用を促進しやすくなります。
具体的には、共通のポイントプログラムやクーポンを導入することで、どのチャネルを利用しても一貫したメリットを感じられるようになります。
また、サブスクリプションサービスやメンバーシップ制度を両チャネルにまたがって展開することで、定期購入や来店頻度を増やすことも可能です。
このような取り組みは、単発の売上ではなく、長期的なリピーター獲得による安定的な売上のベースアップにつながります。
連携により実現できる施策8選
ECサイトと実店舗を連携させることで、顧客にとって便利なサービスや、売上拡大につながる施策が数多く実現可能になります。
ここでは、具体的な8つの施策について解説します。
ECサイトから実店舗での受取りに誘導(店舗受取/BOPIS)
商品の受け取り場所を自宅ではなく実店舗にすることで、送料が無料になり、さらに商品を自分のタイミングで受け取ることができるためユーザーの利便性向上につながります。
また店舗側としても、顧客が店舗で商品を受け取る際に、店内を見て回ることで、追加購入(ついで買い)を促すことができます。
例えば、ECサイトで事前に予約した商品を受け取る際に、以下のような「ついで買い」が発生します。
・店頭に並ぶ新作を見て追加で購入する
・特売品や付属品などを購入する
この「ついで買い」効果により、店舗側は客単価を向上させるチャンスを得られるため、多くの企業がこのメリットを活かし、店舗受取エリアの近くにプロモーションコーナーを設置するなど、売上アップの工夫をしています。
実際に、2020年10月にECサイトを立ち上げた衣料品チェーン大手の「しまむらグループ」では店舗受取サービスの効果として以下のように報告しています。
店受取りの効果として、通常の店舗でのお買い物は、買上点数が約 3 点、一点単価が約 900 円、客単価が約 2,700 円に対し、ECの店受取りの場合は、EC注文分が約 1.5 点、店舗でのお買い物が約 3 点の合計で買上点数が約 4.5 点、客単価が約 4,800 円です。
ECから店舗への送客による買上点数向上が店舗売上の向上に寄与する可能性が高いため、店舗において、関連販売で何を売っていくか、レイアウトをどのようにするか等を研究しています。
出典: しまむらグループ「2021年2月期決算説明会質疑応答要旨」
店舗受取の導入方法としては、フルスクラッチ等の莫大な費用をかけた独自開発を除いて、店舗受取機能を搭載したECカートシステムを利用してサイトを構築するのが一般的です。
弊社の提供するクラウド型ECサイト構築ASP「aiship」では「店舗受取機能」を標準搭載しているため追加開発費用は不要で安価に店舗受取サービスを導入することができます。
「店舗受取機能」では複数店舗の登録・表示や店舗ごとの休業日設定、商品ごとに取り扱い店舗の設定をすることも可能です。
aishipの「店舗受取機能」の詳細は以下ページをご確認ください。
店舗受取サービスはクラウド型ECカートシステムにて実現|aiship
店舗受取サービス(BOPIS)について具体的な導入方法や事例は以下の記事で解説していますので、ぜひ併せてご参考ください。
【実店舗×ネット予約】店舗受取サービスの導入方法とは?
BOPIS(ボピス)とは?特徴・導入方法・事例を解説
実店舗の欠品をECサイトでカバー
実店舗で接客をしていると、お客様が気に入った商品の色やサイズが店頭にないといった場面に出くわすこともあるのではないでしょうか。
例えば、
店舗スタッフ「店頭には在庫がありませんが、お取り寄せできますよ」
来店客「そうですか…今日はいいです」
といったやりとりが発生し、そのまま購入につながらずに終わってしまうケースも少なくありません。
こうした状況が繰り返されると、大きな売上の損失につながってしまう可能性があります。
しかし、実店舗とECサイトがしっかりと連携していれば、こうしたチャンスを逃すことなく、
店舗スタッフ「ECサイトには在庫があります。こちらからご注文いただければ、ご自宅までお届けできますよ」
といった形でスムーズにECサイトへ案内することができ、その場で購入へとつなげることが可能になります。
このような流れを整えておくことで、
・店舗での機会損失を防げる
・ECサイトの存在を知らなかったユーザーにリーチできる
・ECサイトの利用率が向上する
といった複数のメリットが期待できます。
さらに、Amazonや楽天市場などのモールにも出店している事業者であっても、できれば利益率の高い自社ECで購入してもらいたいというのが本音ではないでしょうか。だからこそ、実店舗での接点をきっかけに、自社ECへの認知と利用を促す導線づくりが重要なのです。
実際に、アパレル大手の「GU(ジーユー)」では、店舗内のショッピングカートにモニターとRFIDセンサーを搭載した「オシャレナビ・カート」を導入しており、商品をセンサーにかざすだけで、店頭とEC両方の在庫状況を表示できる仕組みを提供しています。
また、ECで注文する際には「店舗受け取り」か「自宅配送」かを選べるなど、シームレスな購入体験を提供しています。
店舗来店客をECサイトの定期購入へ誘導
特に取り扱っている商品が、健康食品や化粧品・美容品など、継続的に使用される消耗品であれば、実店舗での接客時に「定期購入」の案内をすることで、安定した売上のベースアップにつなげることが可能です。
例えば店舗スタッフが、
「ECサイトから定期購入をお申し込みいただくと、毎月ご自宅にお届けできますよ」
とご案内することで、次回以降わざわざ店舗に足を運ばずとも商品を継続的に受け取れる利便性を伝えることができ、自然な形で定期購入へと誘導できます。
さらに、定期購入の申込をECサイト上で完結させることで、店舗側に専用の受付体制や業務フローを新たに設ける必要がなく、スタッフの負担を最小限に抑えることもできます。
ただし注意点として、定期購入に移行した顧客の来店頻度が下がる可能性もあるため、ECサイトに定期的にアクセスしてもらうための施策(例:メールマガジンや限定コンテンツ配信など)を取り入れるなどのフォローが重要となります。
共通のポイントプログラムを運用
実店舗とECサイトで共通のポイントプログラムを運用することで、どちらで購入してもポイントがたまる仕組みを提供できます。これにより、チャネルをまたいだ購買体験がスムーズになり、顧客の囲い込みが強化されます。
例えば、実店舗で貯めたポイントをECサイトで使えるようにしたり、その逆のケースも対応することで、顧客にとって「どこで買ってもお得」という印象を与えることができます。結果として、利用頻度や顧客ロイヤルティの向上が期待できます。
共通のポイントプログラムを運用する際に重要となる、会員情報とそれに紐づくポイントデータの連携・一元管理を実現する方法については以下の記事で解説していますので、せひ併せてご参考ください。
ECサイトと実店舗の連携でおすすめの方法は?会員情報/ポイントデータの一元管理方法と導入事例
デジタルクーポンによる店舗誘導
ECサイトで発行したデジタルクーポンを、LINE公式アカウントやメールマガジン、アプリのプッシュ通知などを通じて送付し、実店舗での利用を促すことで、オンラインからオフラインへの送客が可能になります。
「週末限定の実店舗用10%オフクーポン」や、「店舗限定ノベルティプレゼント」などをオンラインで配布することで、顧客の来店動機を高められます。特に、季節のイベントやセール期間中の集客施策として有効です。
店舗での返品対応
ECサイトで購入した商品を、実店舗で返品・交換できる体制を整えることで、顧客の不安を解消し、購入ハードルを下げることができます。
サイズや質感に不安があるアパレル商品などでは、「合わなければ店舗で返品できる」という安心感が購買を後押しします。企業側としても、返品時の送料負担や再販対応を店舗スタッフが行えるため、対応コストを抑えることができます。
ライブコマースの活用
実店舗での接客力を、オンライン上で再現できる手段として注目されているのが「ライブコマース」です。実店舗からリアルタイムで商品紹介を行い、視聴者はその場でECサイトから購入できる仕組みです。
実際の使用感や質感をライブで伝えることができるため、特に化粧品やファッション、食品などのジャンルで効果を発揮します。また、店舗スタッフが出演することで、ブランドの親近感や信頼感も醸成されます。
eギフトの店舗活用
新しい贈り物の形として注目を集めるeギフトですが、URLを共有する仕組みを利用した店舗での利活用にも注目が高まっています。
例えば店頭でお土産を購入する際に、eギフト用のQRコードを案内し、オンラインで購入したものをそのままeギフトで贈れるようにする方法であったり、ギフトカードとして販売する方法もあります。
また既存の贈り物の発送受付の伝票記入カウンターの代わりに利用するなど、 事業者の工夫によって様々なパターンで施策を打つことができます。
eギフトの店舗活用についての詳細は以下記事で解説していますので、ぜひ併せてご参考ください。
ソーシャルギフト(eギフト)の仕組みを実店舗運営に活用する方法をご紹介
eギフトの店舗活用例と導入方法
このような施策を実施するにあたり、前提となるOMOの基本的な概念やO2O、オムニチャネルとの違い、実際にOMOを事業に取り入れて成功した事例については以下の記事で解説していますので、是非併せてご参考ください。
OMOとは?具体的施策4選と成功事例|O2O、オムニチャネルとの違いも解説
連携する際に注意すべきポイント
ECサイトと実店舗の連携は多くのメリットをもたらしますが、その実現には慎重な設計と運用が求められます。
ここからは、スムーズかつ効果的に連携を進めるために押さえておくべき注意点を解説します。
システム連携は段階的に行う
ECサイトと実店舗の連携には、在庫管理、顧客管理、ポイントシステム、販売データなどの各種システムの統合が必要です。しかし、これを一度に全て実現しようとすると、開発コストやトラブルのリスクが大きくなりがちです。
そのため、まずは「在庫の一元化」や「共通ポイントの導入」など、効果の高い部分から小規模にスタートし、段階的に機能を拡張していくフェーズ分けが重要です。
ECシステムの提供元やシステム開発ベンダーと連携しながら、フェーズごとにリリース計画を立てて運用することで、無理のない導入が可能になります。
<フェーズの例>
①連携性が高いECカートシステムを選定しリプレイス(API公開、各種システムと連携済み等)
①ECサイトをリニューアル
③ECカートシステムと実店舗の一部データの連携実施(在庫データのみ連携)
④ECカートシステムと実店舗の全データの連携実施
⑤ECカートシステムと実店舗のデータ連携を利用した大規模施策を開始
効率的なシステム連携の手段として、注目を集めているのが「API連携」です。
API(Application Programming Interface)とは、異なるシステム間でデータや機能を連携するための仕組みです。ECサイトと実店舗のシステムをAPIで接続することで、情報の自動連携やリアルタイム更新が可能になります。
手動の手間をなくし、効率的なシステム連携を行うには、APIを公開しているECカートシステムを選定することが鍵になります。
弊社の提供するクラウド型ECカート「aiship」では、APIを公開しているため、在庫管理システムやPOSを始めとした、実店舗のシステムとスムーズに連携し、シームレスな運営を実現できます。
aishipでのAPI連携の詳細はこちら
実店舗スタッフのモチベーション維持
ECと実店舗が連携することで、顧客の購買行動がECサイトに偏るケースもあり、現場スタッフが「店舗の売上が落ちるのでは」と不安を感じることも少なくありません。
実際、ファッション・アパレル系の実店舗で販売スタッフとして働いている人を対象にした 「店頭での接客時に、ECサイトでの購入を勧めているか」についての調査によると、
「勧めていない」が54.2%、「どちらかといえば勧めていない」は34.6%で、合計88.8%がECを勧めることに消極的というデータが出ています。
(「勧めている」は1.6%、「どちらかといえば勧めている」は9.6%)
出典:
ファッション販売のECに関する意識調査|iDA
このような不安を解消するためには、店舗経由でのEC購入に対してもスタッフにインセンティブが還元される仕組みを設けることが効果的です。
例えば、店舗で紹介した商品がECサイト経由で購入された場合に評価対象とするなど、スタッフのモチベーションを維持・向上させる工夫が求められます。
ECサイトの利用率向上施策
連携を実施しても、ECサイトの利用が定着しなければ効果は限定的です。そこで、ECサイト限定のキャンペーンや、オンラインでしか手に入らない商品ラインアップなど、顧客に「ECサイトも活用したい」と思わせる仕掛けが必要です。
また、実店舗に来店した顧客に対して、POPやスタッフの声がけを通じて「ECでも購入できます」「限定クーポン配布中」などの情報を伝えることで、自然にECサイトへの導線を作ることができます。
価格やプロモーション戦略の整合性
ECサイトと実店舗で価格やキャンペーン内容に差があると、顧客に混乱や不満を与える原因となります。「同じ商品がECでは割引されていたのに、店舗では定価だった」といったケースがあると、信頼を損なう恐れもあります。
これを防ぐためには、全チャネルを通じた統一的な価格・プロモーション戦略を設ける必要があります。一部のキャンペーンはチャネル限定で実施する場合でも、その目的やメリットを顧客に明確に伝えるようにしましょう。
顧客情報のセキュリティ対策
ECサイトと実店舗のデータを連携させることで、より深い顧客分析やパーソナライズが可能になりますが、その一方で、情報漏洩などのリスクも高まります。
個人情報や購買履歴を扱うためには、データの暗号化やアクセス制御の強化など、技術的なセキュリティ対策を徹底することが必要です。
また、社内での情報の取り扱いルールや、スタッフへの教育も欠かせません。万が一の際の対応フローを整備しておくことも重要です。
連携フローと具体的な連携方法
ECサイトと実店舗の連携を成功させるには、場当たり的な対応ではなく、段階的かつ戦略的なアプローチが必要です。
ここでは、連携を円滑に進めるためのフローを5段階に分けてそれぞれについて具体的な方法を紹介します。
1. 現状分析と目標設定
まずは、自社の現在の状況を正確に把握することから始めましょう。具体的には以下のポイントを整理します。
・既存のシステムの構成と連携状況(POS、在庫管理、CRMなど)
・実店舗とECサイトそれぞれの業務フローと役割
・顧客の購買行動やチャネルの利用傾向
この分析を踏まえて、「何のために連携を行うのか」という目的を明確にします。
例えば「店舗とECの在庫共有による機会損失の削減」「オムニチャネルポイント導入による顧客ロイヤルティの向上」などが考えられます。
さらに、達成すべき成果を測るためのKPI(例:店舗受取利用率、EC利用の増加率、来店数の増加率など)を設定し、定量的な評価基準を定めておくことが重要です。
2. システム連携の計画と実行
目標が明確になったら、次はシステム連携の設計と導入です。以下のようなステップを踏むと効果的です。
1. 連携すべきデータの範囲の決定
(顧客情報、在庫データ、購入履歴、ポイントなど)
2. システム間のデータ連携方法の検討
(API連携、バッチ連携、クラウド統合など)
3. フェーズを分けた段階的導入
(まずは在庫連携 → 次にポイント連携 → 最終的に統合CRMなど)
大規模な開発になる場合は、専門のシステムベンダーとの協業が不可欠です。実店舗側とEC運営側の要件を丁寧に調整しながら、綿密にスケジュールを立てて進行させましょう。
システム間のデータ連携方法として代表的なものが「API連携」です。
「API連携」は、拡張性・柔軟性が高く、リアルタイムに連携できるため既存業務フローにフィットさせやすいというメリットがある一方で、多くの場合、各システムごとのフォーマットや認証方式に対応するための開発が必要になり、数百万単位のコストや数ヶ月〜年単位の時間を要します。
中小規模のEC事業者にとっては費用対効果やリソースの問題も考慮すると導入のハードルが高く、連携を断念せざるをえない場合が多いのが現状です。
そうした状況を踏まえ弊社では、ECカート「aiship」の提供に加えて、異なるシステム間でAPIを活用したデータ連携を容易にするための専用プラットフォームの提供開始を予定しています。
(2025年5月末リリース予定)
専用プラットフォームを利用することで、専門知識がなくてもローコードで簡単に各システムのAPI連携を実現できます。
API連携について問い合わせてみる
EC-店舗間での連携を実現するAPI連携の具体的な方法や導入フローについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご参考ください。
【図解】ECサイトのAPI連携とは?方法・導入フローを解説
またEC-店舗間の在庫連携をご検討の際は、具体的な在庫一元管理システムを8つ挙げて特徴や料金を紹介している以下の記事もぜひご参考ください。
【2025最新】ECサイトの在庫管理システム8選を徹底比較【一覧表付】
3. スタッフ教育と組織体制の整備
システムが整備されても、実際に運用するのは現場のスタッフです。新しい業務フローが導入される際には、以下の取り組みが欠かせません。
・実店舗スタッフへの業務マニュアル提供と研修
・問い合わせ対応や返品受付などの新たな業務へのサポート体制の整備
・EC担当者と店舗スタッフの連携ルールや情報共有フローの明確化
また、社内でオムニチャネル推進チームなどの横断的な組織体制を整えることで、部門をまたいだ連携が円滑に進みやすくなります。
4. 顧客への周知とプロモーション
連携による新サービスが整ったら、それを顧客にしっかりと伝え、利用を促進するフェーズです。
・店頭POP、スタッフの声がけ、ECサイトのバナーやメルマガでの告知
・店舗受取や共通ポイント制度など、新サービスのメリットを明確に打ち出す
・初回利用キャンペーンや限定クーポンの配布など、行動を後押しする施策
顧客が自然と「便利だから使いたい」と感じる導線づくりがポイントです。
5. 効果測定と改善
連携が始まったら、それで終わりではありません。施策の効果を継続的にモニタリングし、改善を繰り返すことで、より高い成果につながります。
・設定したKPI(例:EC利用率、店頭受取率、顧客満足度など)の定期的な確認
・店舗スタッフや顧客からのフィードバックの収集
・キャンペーンやサービス内容の改善提案とPDCAの継続
例えば「ECでの注文は増えたが、店舗受取が思ったより使われていない」といった場合は、ECサイト内での店舗受取の導線を整理したり、店舗受取特典を見直すなど、柔軟な対応が求められます。
店舗受取の利用率を上げるためには「店舗受取が可能である」ことや「どこで受け取れるか」をECサイトで明示しておくことはもちろん、商品詳細ページでわかりやすく提示して導線を設けておくことをおすすめします。
店舗受取に対応していて近くの店舗で受け取れることがカートページまで進まないとわからない状態だと、カートインを躊躇ってしまい途中で離脱してしまう可能性が高まります。
そのため、できれば商品詳細ページで「店舗受取」か「配送」かの選択や、店舗受取を選択した場合は「受け取る店舗」を選択できるようにすることをおすすめします。
<イメージ>
また店舗受取サービスを利用するユーザーには最寄りの店舗やよく利用する店舗で受け取れる商品を探したいというニーズもあります。
そのため、特に多店舗展開をしている場合は、先述の「商品を指定して受け取る店舗を選択できる」UIに加えて、「受け取る店舗を指定して商品を探せる」UIがあるとより利便性が高まります。
弊社の提供するクラウド型ECサイト構築ASP「aiship」では2025年5月に「店舗受取機能 」をアップデートして、 商品詳細ページで店舗受取の詳細を選択できる機能の提供開始を予定しています。
詳細についてはぜひ1度お問い合わせください。
お問い合わせはこちら
ECサイトと店舗連携の成功事例
京都北山【マールブランシュ】公式オンラインショップ
サイトURL:
https://www.malebranche-shop.jp/
・京都の洋菓子店でもトップブランドの「京都北山マールブランシュ」を展開
・パッケージシステムからリニューアル後、売上拡大
・オムニチャネルなど戦略的EC強化でコロナ禍でも売上を拡大
<ECサイトと実店舗連携のポイント>
ECと実店舗の会員情報をシームレスにつなぎ込み、CRMを強化することで顧客体験価値の向上を実現。
また実店舗とECの購入履歴を統合、ポイントも一元化したことに加えて、これらのデータはCRMツールとリアルタイムで連携。実店舗とECを融合させたマーケティングを可能にしている。

マールブランシュを運営する
ロマンライフ様のコメント
お客様の利便性を高めるために、ECと実店舗の会員情報をシームレスにつなぎ込み、CRMを強化しました。例えば購買履歴をひとつのマイページで閲覧できたり、ポイントを一元管理したりというところになります。
今後はさらにオムニチャネルを推進していきたいと考えています。ライフスタイルに合わせて、実店舗とECを使い分けられるようなショップ作りを目指しています。
具体的には“京都”というコンセプトはそのままに、地元のお客様に愛される洋菓子店という原点への回帰を図っています。実店舗では、ふだん使いできるお菓子を中心に、実際にお店に行かないと食べられない商品ラインナップを用意し、自家需要に応えていきます。
一方でECはギフト色を強くして、京都の方が他県におすすめしたくなるような商品をそろえていく方針です。
まとめ
ECサイトと実店舗の連携は、単なる販路の拡大にとどまらず、顧客体験の向上や業務効率の改善、そして中長期的なビジネス成長を実現するための重要な施策です。
オンラインとオフラインの境界が曖昧になりつつある今、消費者は「いつでも・どこでも・自分に合った方法で買い物をしたい」というニーズを持っています。
そのニーズに応えるためには、ECと実店舗のデータやサービスを連携させ、シームレスな購買体験を提供することが不可欠です。
<連携を成功させるためのポイント>
・ECサイトと実店舗の垣根をなくし、顧客に“選ばれる”体験をつくる
・データ統合で、効率的なマーケティングを実現
・店舗とECの在庫をリアルタイムで連動させて、欠品や販売機会の損失を防ぐ
・現場が前向きに動ける体制整備
・APIを活用したEC-店舗間のシステム連携
・プロモーションの仕組みと伝え方の継続的な改善
これらのポイントを意識しながら今回ご紹介した施策を進めていくことで、ECサイトと実店舗の相乗効果を最大限に引き出し、売上だけでなく顧客との長期的な関係性の強化にもつながっていきます。
また連携の基盤となるシステム連携については、現在利用中のシステムの仕様や、連携が必要なデータ、予算を洗い出した上で適切な手段を選びましょう。
先述の通り「aiship」では、APIの公開に加え、異なるシステム間でAPIを活用したデータ連携を容易にするための専用プラットフォームの提供開始を予定しており、ご利用いただくことで、専門知識がなくても簡単にECサイトと店舗システム間のAPI連携を実現できるようになるため、選択肢の一つとしてご検討ください。
ECサイト運用のご状況や、利用中のシステムの仕様など詳細をヒアリングさせていただき、最適な連携方法をご提案させていただきますので、是非お気軽にお問い合わせください。
aishipに問い合わせてみる
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