街中の百貨店・デパート、あるいはショッピングセンターでギフト(贈り物)を注文する際、熨斗やラッピング、メッセージカード、紙袋の有無などの希望を、対応してくださる販売員から丁寧な接客を受けますよね。ECサイトでも同じことで、ギフト注文として受け付ける為には、本来、人が接客対応する事柄をWEB上で接客するわけですから、カートシステム側でいかに分かりやすくUIを設計し、購入者に迷わせずに注文を完結してもらう必要があります。
注文操作の過程で熨斗などの情報入力は、商品をカートに入れる前の商品ページにて指定するか、商品カートに入れた後の各種情報入力時に指定するかの大きく2パターンに分かれます。利用するECカートシステムによって表示方法や使用感が変わってきますので、事例を交えて検証していきましょう。
- ECカートシステム比較
- 考察
目次
ECカートシステム比較
一般的なECサイト構築ASP(クラウド型)の場合
ECサイトを構築するASPプラットフォームの代表例としてaishipを挙げさせて頂きます。上の画面キャプチャは、aishipの機能名で「商品オプション」の機能を利用して設定した例です。商品ページにて熨斗などを選択や入力した後でカートに入れます。この為、後からの入力のし忘れや、商品との紐づけ間違いを防げる点は使いやすいと言えます。
ただし「商品オプション」は、熨斗などを設定する専用機能ではなく、様々な選択肢を設定できる汎用機能になります。注文者が選択や入力した内容は、受注データ内では「商品オプション」という1つの項目の中にすべて詰め込まれる為、情報の読み取りにくさが懸念点として上がります。
・最も安価なシステムで、熨斗やラッピング、メッセージカード、紙袋の有無などを設定できる。
・専用機能ではない為、一般的なオプション選択肢と同じユーザーインターフェースになる。
・受注業務にて注文情報の中から商品オプションを読み取る工夫が必要になる場合もある。
アプリインストール型ASPの場合
自由にアプリをインストールしてカスタマイズができるShopifyの場合、「のしオプション」を使用して熨斗の設定が行えます。実際の表示イメージや、使用感などが紹介されていますので、気になる方はこちらよりご参照ください。ただし、設定画面を見る限り、熨斗の種類ごとに表示/非表示を選択するのみで、表示位置も含めて設定の自由度はあまりなさそうです。
有償アプリの「ギフトラッピング&のし専用アプリ」を使用すると柔軟な設定ができそうです。アプリの解説画面には実際に設定された画面が紹介されていますが、熨斗画像やラッピング画像がそれぞれの選択肢の横にプレビューのように表示されているので、購入者は迷わず選択できそうな印象を持ちました。
・用意された希望のアプリをインストールすれば利用可能。
・アプリをインストールして動作しなかった場合、ソースコードを理解できる人材による調整が必要になる。
・アプリの仕様通りに運用できなかった場合、対応できるエンジニアの確保、もしくは外部ベンダーへの委託が必要となる。
・スクラッチ開発と同程度の工数が必要になる場合もある。
ギフトEC専用ASP(クラウド型)の場合
こちらは、ギフトEC専用のASP・aishipの「のし・ラッピング機能」を使用した例です。カート画面にて、選択した熨斗画像や説明をリアルタイムに表示し、注文時にイメージを掴みやすく設計しています。また法人用の入力にも対応しており、会社名や肩書きの入力ができたり、内祝いの場合はお子様のお名前の入力欄に読みがなを表示させて入力できるようなっており、ギフトを送るお客様が実現したいことに丁寧に応えています。
aishipの「のし・ラッピング機能」を使って取得した内容は、受注データ内では個々のテーブルに格納しますので、受注データの内容確認やデータを出力する際、熨斗・ラッピングなどの情報を読み取りやすく、効率的に運用することが可能です。
・ギフトECを本格化していくための専用機能が、開発費用や開発期間をかけずに、安価にすぐに利用できる。
・ギフト用に手の込んだ開発や複雑な設定をすることなく、利用申込(トライアル含む)をするだけで、すぐに動作確認ができ、自社の運用に適しているかの判断が可能。
・今は備わっていない機能があったとしても、毎月のバージョンアップの中で、今後機能拡充していく可能性が見込める。
・場合によってはカスタマイズができる。
・自社の運用にマッチしない場合、EC運用をASP(クラウド型)の仕様に寄せていく必要がある。
オープンソースをベースにした開発の場合
オープンソースのEC構築システム、EC-CUBEを例にあげますとこちらのプラグインを使用してカスタマイズをしていきます。
EC-CUBEは、オープンソースをベースにカスタマイズしていきますので、ECサイトごとにオリジナル性の高い内容で自由に設計していけます。半面、プラグイン自体の開発コストやメンテナンスコストに加え、プラグインを導入することでシステム全体に生じる影響も考慮しながら設計しなければなりません。自社でエンジニアを抱えていない場合は、外部のシステム会社等に依頼をする必要もあります。
・オリジナル性の高いECサイトを構築できる。
・開発~運用に至るまで、常に開発コストやメンテナンスコストが発生する。
考察
今回、熨斗・ギフトラッピングを対応しているECサイトを調査している中で、いまだに、備考欄に自由入力という方法で運用しているカートもありました。自由入力の場合、開発コスト自体は最も安価に済むかもしれませんが、実際の運用ではEC運営者側が意図しない内容を入力されてしまうケースも考えられますので、その場合は確認のコストが発生してしまいます。注文件数が少なければ、この方法でも運用はできるかもしれませんが、やはりギフトEC専用に設計された入力項目が用意されたカートが使いやすいことは明白です。
今後、ギフトECを強化していくことを検討されている場合は、現時点で考えられる4つの選択肢「一般的なECサイト構築ASP」「アプリインストール型ASP」「ギフトEC専用ASP」「オープンソースをベースにした開発」の中から、自社のEC運用の方向性に沿ったECカートシステムを選定することで、その後の繁栄に繋がっていくことでしょう。